第279話華奈の不安 隅田川の異変

由香利の「大姉御風」に戸惑いを見せる巫女たちはともかく、光は由香利と、その父と、一台目のキャデラックに乗り込んだ。

その運転手も、由香利の父つまり「江戸の大親分」の組の者らしい、キリッとした角刈りの男。


由香利が光に声をかけた。

「ここらへんのチンピラ警官なんかと違って、よほど度胸が据わってんのさ」

「かといって、非道な法に触れる行為とか、弱い者いじめはしないよ」

「程度の低い悪を懲らしめ、江戸の街を平穏に保つの」


光も、それには頷いた。

「そういえば、程度の低い警察官もたくさんいたな」

「ここらへんでも、地上最強とか言う空手道場の手下になっていたり」


由香利の父も、話に加わってきた。

「渋谷ではご迷惑をおかけしました」

「あんなチンピラ風情で、その後始末しておきました」


光は、少し笑って首を横に振る。

「いや、あの時は、金剛力士のおっさんに任せた」


由香利も、知っていたのか、笑う。

「うん、それが正解、光君はなんでも動き過ぎると疲れるよ」

「親分自ら動かないこと」


そこで光は笑ってしまう。

「僕が親分なの?まだ高校生だよ」


しかし、由香利は後に引かない。

「うん、大親分さ、ある意味最強のね」


一台目のキャデラックで、光たちは、そんな話をしているけれど、二台目のキャデラックの巫女さんたちは、落ちつかない。


華奈がブツブツ言っている。

それも、少し不安な様子。

「あのね、夢に阿修羅たちが出て来てね、晴海ふ頭で伊勢の大鏡の呪法をするようにって、言うの」

「由香利さんがいれば何とかできるけれど、一人だと不安なの」


そんな華奈に春奈が厳しい言葉。

「いい?せっかく期待されてるんだから、しっかり間違えないようにしなさい、呪文そのものは覚えているでしょ?」

ルシェールも華奈には厳しい。

「渋谷で光君を救ったこともあるでしょ?どうして二回目が不安なの?それが甘えって言うの」

由紀は、冷静に華奈に一言。

「もし、華奈ちゃんが不安だったら、私が華奈ちゃんのお母さんに聞こうか?」

「それでもいいけれど、華奈ちゃんの、そんな不安の理由を説明することになるよ」


華奈は、由紀の言葉で震えた。

「・・・それは困る・・・鬼母だけには言わないで・・・」


ソフィーも冷静に聞いていたけれど、やはり一言がある。

「楓ちゃんにも、言っちゃおうか?」


華奈は、それで「撃沈」。

「うーん・・・」と唸って、鏡の呪法の「おさらい」を始めている。



さて、キャデラック二台が、杉並から東京湾、隅田川に近づくにつれて、空に黒い雲が増えている。

まだ、午前中なのに、かなり暗い。

そのため、全ての車がライトを点灯して走っているほどである。


キャサリンが、窓から見える隅田川を見て、震えだした。

「赤黒くい泡が・・・ブクブクと・・・怖い・・・」

「私を睨んでいるみたいに・・・」

震えて顔が青ざめてしまったキャサリンの身体を、サラと春麗が護るかのように、支えている。

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