第275話異変が発生し始めた。

怖れていた異変が発生し始めた。


まず、築地から移転したばかりの豊洲市場構内で、事故や喧嘩が絶えない。

まず、小型運搬車「ターレ」による火災が何度も発生した。

また、「ターレ」が、人と接触し、怪我人が発生する事故が日々増加傾向。

そして仲買人同士の喧嘩が多い。

それも単なる口論では終わらない。

つかみ合いの喧嘩から、暴力沙汰に発展。

それは、客がいようがいまいが、関係なし。

喧嘩の場所の周囲にある「商品」の魚類までも、喧嘩のトバッチリを受けて散乱、その時点で「商品」とはならなくなってしまう。


仕入れに来た業者たちも、それには混乱、立腹。

そして仲買人や他の仕入れする業者たちとの「口論」から「暴力沙汰」に発展。

ますます人間はもちろん、「商品」にまで損害が及び、大混乱状態が続いている。


また、豊洲市場から魚類を仕入れ、魚介類料理を客に提供する店においても、異変が発生し始めた。

まず、「料理が、魚が美味しくない」と、店側に文句を言いだす客が続出。


「こんな腐ったようなハマチが食えるか!」

「魚の目が死んでるって!」

「出汁が濁り過ぎている!」

「キスの天ぷらが苦い、そんなことあるか?」

「こんなひどい大トロははじめてだ、これならアボガドのほうがましだ」

・・・・・客の文句は全く止まらない。


その客の文句に、店側も怒り心頭。

「うるせえ!この田舎もんの、トーシロ!」

「なめんじゃねえ!」

「こちとら、ヤッパもってんだ!」

「表に出ろ!」

ついには、客と店の暴力沙汰にも発展し、怪我人も多数発生している。


あるいは、新鮮な状態で、豊洲から買って帰って来たにも関わらず、あっという間に魚が劣化。

「これでは、売り物にならない」と、閉店を余儀なくされる料理屋も多くなっている。


そのような不穏な様子は、豊洲界隈や魚料理を出す店だけではない。

全て海や川に近い場所で発生し始めた。


「ねえ、川から変な匂いがする」

「生臭いっていうのかなあ、血の匂いもする」

「うーん・・・すっごくムシャクシャするなあ」

「ねえ、あそこで子供たちが喧嘩している」

「血を流している・・・止める?」

「いいよ、やらせておけば?」


「あら、あそこでもホームレス同士が、喧嘩している」

「二人とも包丁持っている・・・危ない・・・」

「いいよ、下手に止めに入って、こっちが怪我したら損する」

「いや、だめだよ!止めなきゃ」

「うるさい!勝手にやれば?」


また、川沿いや海近辺を走る道路では、正面衝突や追突が増加。

そのため、警察車両や救急車、消防車のサイレンが、ひっきりなしの状態。

そしてその事故の処理で、道路はますます渋滞。

あまりにも車が進まないので、それに業を煮やした運転手同士で口喧嘩や暴力沙汰にまで発展することも多くなっている。



ただし、事故や事件が多発していると言っても、難しいのは発生原因を特定できないこと。

豊洲市場で販売されている魚類にしても、抜き打ち検査段階では、全く「正常」なもの。

そうなると、魚業者に何の指摘も出来ず、せいぜい「喧嘩、暴力沙汰の禁止」などを言い終えて帰る以外にはない。

また、海や川の水質検査を行ってみても、「匂い程度」であって、特定の原因がない。


本当に、この異変には、東京都や政府も苦慮するしかない状況が続いている。

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