第265話それぞれが帰宅の途に

光が叔母奈津美に声をかけた。

「ねえ、奈津美叔母さん、お願いがあるんだけど」

奈津美が光の顔を見ると、光は言葉を続けた。

「また、いつか温泉に全員で行ってもいいかな」


奈津美はにっこり。

「はい、いつでもお待ちしておりますよ」

「全員でなくても、いつでも誰でもかまいません」

「最高のおもてなしをいたします」



さて、そんな叔母と甥の会話は、早速巫女全員の顔を明るくする。

華奈「お魚三昧だなあ、蟹も食べたい」

楓「温泉ダイエットだな」

春奈「これでますます美肌だ、まだまだ小娘に負けてはいられない」

ソフィー「また警護が面倒・・・でもいいや、たまには」

ルシェール「ずっと奈津美さんとニケさんに魚料理を教わりたかったから、ちょうどいい機会だ」

由香利「一度奈津美さんの温泉に入りたかったの、何とかスキを見つけて光君を誘惑するかな」

由紀「この前は、年末年始で巫女のバイトで行けなかった、今度は光君と家族風呂に入りたい」

キャサリン「日本の温泉は憧れ、いいなあ富士山と駿河湾」

サラ「ローマ式風呂とはどう違うのかな、楽しみ」

春麗「とにかく楽しそうだ、骨休めもいいかな」

周美鈴「駿河湾クルーズもいいなあ、海から見る富士山も楽しみ」


・・・・母親世代からは、特に感想はない。

ただ、それぞれが目で合図をし合っている。

また、その内容については、結界が強いらしい。

そのため、「候補者世代巫女」の呪力レベルでは読めないようだ。


それでも圭子が代表して奈津美に

「わかりました、その際には」

奈津美は真顔で頷き、母親世代巫女との会話が終了となった。


さて、朝食も伊豆の温泉の話も終了したことから、全員が帰宅ということになる。

すなわち、奈良から来た人たちは奈良へ、都内に戻る光たちと別れなければならない。


別れ際に楓が光に話しかける。

そして、その話が長い。

「光君、かなり強くなってはきたけれど、油断しないでね」

「心配になったら、いつでも私を呼んでね」

「それから電話に出ること」

「メールは読むこと、返信をすること」

「いい?心配で仕方がないんだから」

「それから、食生活には気を付けて」

「せっかく素晴らしい巫女さんたちに囲まれているんだから、変な女にヘイヘイホイホイついていかない」

「一緒に奈津美叔母さんの温泉に行くのが楽しみ」

「また奈良に帰って来なさい」

「いい?寂しいんだからね」

「絶対だよ、光君」

・・・・・結局、楓はいつものごとく泣きはじめてしまった。


そして涙目のまま、奈良に帰る母親たちと、政府が調達した帰りの車に乗り込んでいく。


春奈

「光君、せめて握手するとか、抱きしめてあげるとか」

ソフィー

「ほんと、時々腹が立つけれど、いなくなると寂しいね」

ルシェール

「秘めたパワーはすごいの、楓ちゃんってね、本当はすごくいい子」

華奈

「困った時に、必ず助け船をしてくれるの、やさしいの楓ちゃんって」


そんな話をしながら、都内組も政府の車に乗り込んだ。

何しろ、明日からは、また授業やら日常の生活が始まる。


そして光がポツリ

「楓ちゃんか・・・後で電話するかな」

「それから、当分は大きな事件は起きないかな」

「音楽の練習をしないと」


都内に帰る巫女たちの表情には、安心感が漂っている。

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