第216話ホテルのティーラウンジにて 

光の一行は、再びサロンバスに乗り、宿泊先のホテルに戻った。

時計を見ると、午後3時を少し過ぎたところ。

特に母親世代の巫女は、光と同じで、「横になり休みたい」雰囲気であったけれど、「お嫁さん候補者」世代は、帰りのバスで少し寝て、回復してしまった様子。


まず、楓が騒ぎ出した。

「ここのホテルのティーラウンジが素敵なの」

「紅茶も一級品で、ケーキもマジで美味しい」


華奈も、奈良育ち、それには詳しい。

「そうなの、雰囲気もさすがにレトロで、私のようなお嬢様にはピッタリ」


そのお嬢様発言で「ムッと」する同じく奈良育ちの春奈は、少し迷った。

「眠いけれど、そのまま部屋に戻ると、この小娘連中になんて言われるかわからない、ここは教育者として監視しなければならないかなあ」


またソフィーは、仕方がなかった。

「しょうがないなあ、この若さしかない娘どもめ、政府からの監視役としては席を外すわけにはいかないなあ」

と、結局ティーラウンジの受付まで歩き、光と「お嫁さん候補者世代巫女」分の席をゲットする。


由香利が、「立ったまま寝ているような」光の腕を組んだ。

「光君は座って寝ていてもいいから、一緒にね」

光は、その眠そうな顔を変えない。

「あれ?由香利さん?すごく綺麗ですね」

由香利は、その言葉で顔が真っ赤になるけれど、言い終えた途端、光は立ったまま寝息をたてはじめてしまった。


由紀

「おそらく、光君は今言ったことなど、何も覚えていない」

キャサリン

「単なる条件反射で、名前だけ変えるのかも」

サラ

「そうなると、どうせ寝ているだけの光君の分のケーキを食べちゃおう」

春麗

「ああ、それがいい、食べたもの勝ち」


というような経緯で、若い人世代は、全員がレトロなティーラウンジに入ることになった。

そして、巫女たちは席につくなり、また騒ぎ出す。


由紀

「なんか天窓?すごくリッチな感じ」

キャサリン

「日当たりも良くて、ホッとする」

サラ

「私は珈琲でもいいかなあ」

春麗

「ほうじ茶ラテとあんぽ柿のケーキが美味しそう」


奈良育ちのルシェールは、やはり詳しかった。

「でもね、ここは紅茶の淹れ方が絶品なの」

「ロンネフェルトシステムって言ってね、純粋な麻のネットフィルターで紅茶を淹れるの」

「お湯通りが良く、浮き上がりにくい形なので、最良の状態で茶葉を抽出できるの」


ルシェールの言葉で、全て決定してしまった。

結局全員が、「ダージリンとケーキ」になった。

ケーキは、それぞれ違うもの選んだ。

アップルパイ、モンブラン、チーズケーキ他のオーソドックスなもの。


ただ、光は巫女たちに囲まれながらも、目をしっかりと開けられない。

眠そうというのか、時々目を開けて、外を見るけれど、すぐに閉じる。

何かを感じ取っているような表情にも見える。

頼んだダージリンを少しだけ口にする程度。

予想通り、ケーキは食べようとしない。


「疲れちゃったのかな・・・でも・・・何か変・・・」

華奈がつぶやいたことを、全員の巫女が同じように感じ取っていた。


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