第210話西の京散策(1)薬師寺白鳳伽藍

午前中の予定を終えた一行は、再びサロンバスで、西の京の薬師寺、唐招提寺に向かうことになった。


光は、うれしそうな、そして懐かしそうな顔。

「西の京か・・・なんかのどかで好き」

「子供の頃、父さんと母さんと歩いた」

「お団子買ってもらって食べた」


叔母の圭子も、思い出したようだ。

「そうねえ、光君がまだ三歳くらいかな」

「家に泊まって、史さんの車で家族で出かけたんだよね」

「楓も行きたいっていったけれど、その時は家族水入らずって気持ちに私もなってね、楓は家においたの」


美紀は、昔を懐かしむような顔。

「そうねえ、本当に絵になる親子だった」

「史さんと菜穂子さん、そして可愛い光君」


他の母親世代の巫女たちも、昔のことを思いだしてしまったようだ。

サロンバスは、途端に、シンミリとしてしまった。


しかし、そんな中でも、自分のペースを変えない楓が口を開く。

「そういうことを聞くと、お団子が食べたくなる」

「私は置いてきぼりにされた上に、お団子を食べていない」


ただ、それには楓の母圭子から「待った」がかかる。


「あのね、楓、話の筋を考えるべきなの」

「あなたは、薬師寺と唐招提寺よりも、お団子ってことなの?」

「そもそも、朝は目一杯食べて、林神社の前にはお饅頭を食べて、さっきのおでんも、余計に食べている」

「それが、どうしてダイエットに取り組むってことになるの?」


楓は、手厳しい「母の指摘」により完敗、口を閉じるしかなかった。


さて、少々のことはあったけれど、サロンバスはまず、薬師寺に到着した。

そして、ここでも宗教史学者の美紀が説明をはじめる。


「薬師寺は法相宗の大本山、つまり興福寺と同じ」

「最初は、西暦680年に天武天皇が当時の皇后である持統天皇の病気平癒を祈願し、薬師寺建立を発願」

「その天武天皇が没して、西暦697年に持統天皇によって本尊阿弥陀仏が開眼」

「その後、文武天皇の御代に藤原京に堂宇の完成」

「そして、西暦710年の平城遷都に伴い、西暦718年に、現在地に移されました」

「また、西暦1998年に、ユネスコ世界遺産に登録されています」


その説明の中、光は寺の広い伽藍を見回している。

そして

「マジで広いなあ、東塔、西塔もかっこいい」

「金堂が懐かしい」

とつぶやくと、美紀が反応。

「そうね、光君、まずは金堂かな」

「薬師如来と日光、月光でしょ?」


光が素直に頷くと、美紀は何故かサラにも声をかける。

「サラちゃんも、しっかり見てね」

「きっと驚くべきものがあるから」


突然、話を振られたサラは目をパチクリ

「え?何?美紀先生・・・・」

「すっごいドキドキしてきたんだけど」


すると美紀は今度は春麗に声をかける。

「春麗ちゃんも、ニコニコするものがあるかも」


春麗も、それで驚く。

「えーーーっ?」


一行は広大な薬師寺伽藍の中、まずは金堂を目指すことになった。

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