第204話本当のミサと巫女たち

その大きな光輪は、天空からゆっくりと降りてきた。

そして祭壇の前で、純白の長衣を着た「人の姿」に変化した。


光は、ますますうれしそうな顔。

「これはこれは・・・自ら?」

と声をかけると、その「人の姿」が口を開く。

長い髪をしていて、厳かさもあるけれど、不思議に話しやすそうな雰囲気もある。


「そうですね、母マリアにも言われましてね」

「それに、十字架姿ばかりでもね」

その声は、高くも低くもない、きれいなバリトンの声である。


光は、その「人の姿」に頭を下げた・

「大聖堂の時といい、富士山麓といい、お世話になりました」


その「人の姿」は、やさしい顔。

「いやいや、阿修羅様の宿り子、本当に珍しくこの世に出ているのですから、簡単に死なすわけにはいきません」

「私としても、神霊界としても、それは決定事項なのです」

「何があっても、救いますよ」


光は、その「人の姿」に再び声をかけた。

「ところで、今回の秘薬は?」


その「人の姿」は、それで少し苦笑い。

「後ろの巫女様たちが、大騒ぎされていましたけれど、殺虫剤です」

「人の身体の中に入れれば、全ての有害な虫は入れなくなりますし、入っていても即時に死にます」

「また、人の身体以外の場所に散布しても、そのまま殺虫剤として使用できます」


光は、少し笑う。

「そうなると、飲んでも問題がない殺虫剤?」


すると「人の姿」は、苦笑いのまま、ルシェールをチラリ。

「はい、特に口移しでなくても、今回は」


ルシェールは、途端に真っ赤な顔になる。


光は、そこで少し考えた。

「そうなると、後は、蜘蛛とか、お伊勢さんにもらった御力、春日様の御力も含めて、組み合わせ」


「人の姿」は、頷いた。

「ミカエルにも、協力させます」

「具体的な作戦作成はミカエルに」


「人の姿」がそこまで語った時点で、再び聖母マリアが、その隣に立った。

そして、聖母マリアが光の顔を見た。


「余計な戦闘には、出来る限り加わらないように願いたいのです」

「小さな戦闘などは、キャサリン、サラ、春麗にまかせて欲しいのです」

「そのために、遣わしたのですから」


光は、少し困った顔。

「イジメられている人を見ると、黙ってはいられなくて」


「人の姿」は、光に助け船・

「それは仕方ないさ、何しろ阿修羅様の宿り子」

「自然に動き出してしまう」


そんな話が続いている中、ルシェールも含めて、全く声が出せない。

ただ、それぞれの心に飛び交う言葉は、同じ。


「聖母マリア様と、イエス様、そして光君の口を通じて阿修羅様が語りあっている」

「本当のミサとは、神霊と交信すること」


しかし、その「本当のミサ」の内容が、巫女たちに理解できたのは、ここまでだった。

その後も、巫女たちも祭壇の前にはいたけれど、その言葉と内容は、途中から全く理解できないものになってしまったのである。

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