第202話光が思い出したこと

見渡すばかりのお花畑ではあるけれど、その中にはピンク色の花をつけた木がたくさん立っている。

また、足元で咲いている花は、アネモネの赤い花や小さく華奢なラケフェット(野生のシクラメン)が多い。


巫女たちの中で、さすがは地中海地方出身、アルテミスの巫女サラが、その木に気がついたようだ。

うれしそうに、その木に近づいていく。


「これはアーモンドの木」

「ほぼ、日本では栽培されていない木になります」

サラの驚いたような声が聞こえてきた。


それには、光も、また他の巫女たちも驚いた。

「へえ・・・遠くから見ると、まるで桜みたい」


圭子

「これがあのアーモンド?へえ・・・きれいねえ・・・」


奈津美

「お菓子とかオイルとか、使い道が多いけれど、その花もきれいだねえ」


医師である美智子も驚きながら説明する。

「食品の中でもビタミンEが最も多いの」

「ビタミンEは、活性酸素による体細胞や血管の酸化を防ぐ抗酸化作用があって、老化の予防に効果がある」

「悪玉コレステロールの酸化を抑制し、豊富な食物繊維を含み、腸の働きを活発にして整腸を促す」


美紀は、宗教史学者として別の意見

「そういえば、その効用が紀元前から認められていて、旧約聖書の中のどこかに書いてあったかも」

「確か、モーセの兄アロンの杖が、アーモンドの木でできていて」

「イスラエルの祭司族の祖となるレビが選ばれた。そしてそのあめんどうの杖は、契約の箱の前に保存されているとか」


さて、聖母マリアの巫女ルシェールは、そんな話をニコニコと聞きながら、光の手を、しっかりと握りなおした。


そして、光の手を引きながら、歩きだす。

その前方には、純白の大理石でできた祭壇が立っている。


光がルシェールに尋ねた。

「ねえ、ルシェール、あそこに集まるの?」


ルシェールは頷いた。

「そういうこと、聖母マリア様から、御言葉があります」

「それと秘薬」

ルシェールは、そこまで言って、顔が赤くなった。


しかし、光には、ルシェールの顔が赤くなる理由がわからない。

白い大理石の祭壇で、ミサとか聖母マリアの御言葉があるのは、まだわかる。

しかし、そんな厳粛な雰囲気で、ルシェールの顔が赤くなる必要はないと考えている。


ルシェールは、そこでまた光に

「ねえ、秘薬って、光君・・・全く記憶がないの?」

「飲んだ経験あるでしょ?」

「ないとは言わせないよ」

少し、強めの言葉が続く。


光は、珍しいルシェールの強い言葉なので、記憶を必死にたどる。


・・・・そして、思い出した。


「ルシェール・・・もしかして、あの時?」

その光の顔も赤い。


ルシェールは、光の手を握りなおした。

「まったく・・・この鈍感男」


光も、ルシェールの手をしっかり握りなおしている。

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