第201話聖母マリアの出現(2)

「あれ・・・」

真っ白い霧の中を進む光の身体が、ビクッと反応した。

そして、震えだした。

その光をルシェールが組んだ腕で支える。


「どうして・・・」

光の唇も震えだした。


ただ、震えだしたのは、光だけではない。

叔母の圭子と奈津美、ニケ、ナタリー、美智子、美紀の母親巫女たちも震えている。


楓がつぶやいた。

「もしかして・・・この音楽・・・」

光り輝く教会の中から、聞き覚えのある音楽が聞こえて来る。


華奈も、気がついた。

「うん、これ、ペルゴレージの悲しみの聖母」

「去年のクリスマスコンサートで光さんが指揮した曲」


春奈は、震える光が理解できない。

「だって、この曲って、光君のお母さんの、お葬式で流した曲って聞いたことあるよ、それをあえてクリスマスコンサートで演奏したのに」

「・・・実は・・・お母さんの死を克服できてなかったの?」


ソフィーは心配そうな顔。

「それは・・・それほどのトラウマだと思うよ」

「そんな簡単に一曲演奏しただけでは・・・」



そんな、少々動揺の雰囲気を見せる奈良系の巫女たちではあるけれど、それ以外の巫女たちは、そうはならないようだ。


由香利がまず、口を開いた。

「光君は、そこまで弱くないよ、もっと別の理由で身震いしているだけ」


由紀も落ち着き払っている。

「奈良の巫女さんたちのほうが、光君のお母さんの葬式がトラウマになっていると思うの」

「だって、光君の身体から出ているオーラは、明るいよ」

「悲しみのオーラじゃない、まるで遊びに行くようなオーラになっている」


キャサリンも、由香利と由紀の意見に賛成した。

「何しろ聖母マリア様のお導きです、悪いようにはなりません」

「ルシェールだって、それを意識しているから、光君をつかまえて離さない」


サラは、少々、口惜しそう。

「本当にルシェールは強いなあ、あっという間に腕を先に組まれてしまった」

「私も、スキを見て、光君と腕を組んでみたい」

「とにかくチャンスを探さないと・・・」


春麗は、そんなサラに笑う。

「ねえ、順番で腕を組むってどう?」

「公平にね」」



さて、そのような状況の中、光と巫女たちの一行は、聖母マリアのお導きで、教会の中に入った。


そして、驚いた。


光は入るなり目を丸くした。

「え?何?ここ・・・どこ?」


ルシェールは、ニコニコしているだけ。


再び、聖母マリアの厳かな声が聞こえてきた。

「ここでミサを行います」


しかし、いわゆる教会内部の風景ではない。

見渡すばかりの大花畑が広がっている。

そして、不思議にして、高貴な香りが漂っている。

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