第179話東大寺二月堂にて

二月堂の長めの階段をのぼりながら、楓は光に文句を言い続ける。

「だいたい何?そもそも光君は私に会いに来たんでしょ?」

「それが、可愛い女の子たちに囲まれているからって、私に近寄って来ないじゃない!」

「そういうのがアホっていうの!」

・・・・・ここでも、長いので省略。


そして、光は「ただ、ウンウン」と頷くだけの状態。


その二人を見ている、圭子。

「あの姿は、幼児の頃から何も変わっていない」

奈津美も、苦笑している。

「光君も、ただ聞いているだけ、聞き流しているかも」


華奈が、楓の後ろ姿で、ちょっと文句。

「それにしても、あのお尻は、すごいなあ・・・お尻が歩いているみたい」

「どれだけ食べれば、あのお尻になるのかな」


ルシェールは、楓の言い方が気に入らない様子。

「あれはひどい言い方、そもそも光君は女の子には亀なんだから気にしなくてもいいのに」

褒めているのかけなしているのか、よくわからない。


由香利と由紀は、少し光奪取計画を考えたけれど、途中であきらめた。

由香利

「どうせ、光君のことだ、何も聞いていないしさ、結局後で、光君が下を向くと、楓ちゃんが言い過ぎたって、すり寄るだけ、いつものパターン」

由紀

「それに楓ちゃんのいうことは、一々ごもっともだ、たまには叱られるのもいいさ、でも光君は何も聞いていないから同じ」


春奈とソフィーは、「また仲介して面倒になるのは嫌」と言って何も言わない。

キャサリン、サラ、春麗は、「楓に叱られる光」が本当に面白いらしい。

ニコニコとして、見ているばかりで、階段をのぼっている。


さて、そんな状態ではあったけれど、一行は二月堂の階段をのぼり終えて、お堂前の回廊部分に到着した。

そして眼下には、奈良の風景が一面に広がっている。


楓が光の腕をグイッと組んだ。

「ね、夕焼けに間に合ったでしょ?」

「だから言ったの、わかる?光君」

階段をのぼっている時などの「お怒り口調」とは全く異なり、やさしい声になっている。


光は、その楓に応えた。

「そうだね、楓ちゃん、子供の頃からここ、大好きだったよね」

光の声も、やさしい。


圭子がポツリ。

「あの二人の後ろ姿は、子供の頃と同じ、それはそれで面白い」


美紀が、ここでも説明をはじめた。

「この東大寺二月堂は、大仏殿の東にあたり、東大寺境内のなかでもかなり高いところにある建物です」

「毎年3月のお水取りの舞台として有名、本尊は十一面観音菩薩、秘仏とされています」

「急な斜面の上に建てられたので、京都の清水寺みたいな舞台造」

「それだから、今、見ているように、お堂前の回廊部分からの眺めは見事」

「大仏殿の屋根をまん中に東大寺の境内が見わたせるし、そのむこうに奈良の町も眺められる」


全員が、夕焼けの中、眼下に広がる風景に見とれていると、美紀は説明を続けた。

「お水取りと呼ばれている儀式は、3月に2週間くらい行われます」

「正式には修二会、そのなかでも3月12日の深夜に行われる儀式が本当の意味でのお水取り」

「修二会は、1年間にすべての人が犯した過ちを、その人に代わって本尊の十一面観音にざんげする儀式で、奈良時代から1回も途切れずに続いています」


美紀の説明はここまでだった。

本当に美しい夕焼けが奈良の街を包み込んでいる。

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