第176話現世に戻った光、少し変化

光は、ようやく泣き止んだ。

顔がスッキリしている。

母菜穂子の顔を見て

「ありがとう、僕、まだ頑張る」

「逢えてうれしかった」


菜穂子が再び思いっきり光を抱きしめた瞬間だった。

眩い光が全てを一瞬包み、そして消えた。


「あれ・・・」

最初に聞こえてきたのは、光の声。


「うん、戻った」

次に叔母奈津美の声。


「この十一面観音様のお導きで、極楽浄土へ」

「その極楽浄土に菜穂子さんが出て来てくれた」

叔母圭子の声は、湿っている。


光が周囲を見回すと、おそらく「極楽浄土」に飛ぶ前の東大寺四月堂の中にいる。

天井もしっかりあるし、壁も消え去っていはいない。


叔母奈津美が光に声をかけた。

「きっと、菜穂子姉さんが光君を抱きしめたかったんだよ」

「お話もしたかったのかな」


光が頷くと叔母圭子

「とにかく良かった、光君の顔がスッキリしたもの」

涙顔が笑顔に変わっている。


美紀もようやく声を出す。

「まさか、極楽浄土を実際に見られるとは・・・」

「でも、菜穂子さん、きれいだった、まるで天女」

美紀は、夢を見るような顔になっている。


華奈が口を開いた。

「菜穂子叔母さんに、光さんをお願いしますって、言われた」


春奈が、フフンと笑う。

「それは私も言われた、本当に助かるともね」

ソフィーも少し笑う。

「今回の奈良詣では、光君のお嫁さんを決める話ではないの」

「それよりも光君の心の傷を癒すことと、今後の悪神との対決準備」


由香利は、まだ感激している。

「ほんと・・・きれいな人でした、光君によく似ている」

由紀は、涙が止まっていない。

「光君のお母様と光君が抱き合っている姿は・・・いろんな思いに満ちていて・・・」


ルシェールが光の肩をポンと叩いた。

「大丈夫、私もしっかり支える」

「命に代えても、光君を護る」


ルシェールの母、ナタリーが涙声で

「それは、全ての巫女の思い、菜穂子さんを哀しませたくない」

確かに全ての巫女が、それで頷いている。


ずっと泣きじゃくっていた楓が、光の腕を引いた。

「ねえ、光君、二月堂に行こうよ」

「そろそろ、夕焼け」


光は、泣きじゃくる楓に

「うん、あの風景は好き」

「行こう、みんなで」

その声も力強い。


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