第167話光の大ボケと夜の楓の危険性

伊勢神宮の外宮、内宮参拝、それぞれの不思議な御力を受け取った一行は再びサロンバスで、奈良に向けて走り出した。


光はもちろんのこと、全ての巫女が少々疲れて眠そうな顔をしていたけれど、ソフィーには全員に話があるらしい。

少し厳しめの顔で、話しはじめた。

「まず、奈良において、数々の目的地があります」

「場所的には、奈良公園一帯の春日大社、氷室神社、東大寺、興福寺、奈良町まで歩いてお馴染みの元興寺」


それを聞いた時点で、光はますます疲れたようだ。

「え?マジ?足が棒になる」

「僕は阿修羅君を見るだけにする、あ!友達の八部衆は・・・挨拶ぐらいはするかな」

しかし、それでも、今回の奈良行きを言い出したのは、そもそも光。

そして「楓とお散歩すること」が、出発点だった。

いい加減な光は、いつの間にか、それをしっかり忘れている。


その光にルシェールが、苦言。

「光君、そういうことを言っていいの?」

「楓ちゃん、絶対に怒るよ、それも、ものすごく」


春奈は、それでフフンと笑う。

「まあ、光君が楓ちゃんにコテンパンに叱られるのも、楽しみだあなあ」

「とにかく、日頃のストレスがそれで、全部消える」


由香利も笑い出した。

「そうですねえ、ほんと、すっごいよね、可哀そうだけど見ているのも面白い」


由紀はまた別の質問。

「ところで、ソフィー、宿泊場所をよく聞いていなかったんだけど、今日はどこに泊まるの?」


由紀のまともな質問に、「楓による光へのコテンパンお叱り」に気持ちが移っていたソフィーは、再び真面目顔に戻った。


「はい、政府としては、全員が同じホテルに泊まります」

「あの高台にあるクラシックなホテル」

「奈良にご実家がある方もおられますが、万が一の警備のためとお察しください」


そのソフィーの説明を聞いて、春奈はちょっとしたガッツポーズ。

心の中では、

「ふむふむ、これであの意地悪母美智子の底意地の悪い文句を聞かないですむ」

「はぁ・・・名門ホテルで安眠できる」

と思っている。


光も、ホッとした顔。

「うん、それなら安心、夜だけでも楓ちゃんから離れられる」

しかし、光はやはりウカツだった。


それを華奈がしっかり聴き取っていたのである。

そして華奈

「ねえ、光さん、楓ちゃんの夜って危険なの?」

華奈としては、ゴクゴク当たり前の質問。

要するに、楓は夜になっても「光を叱る」のかどうかが、気になったらしい。


光は、その華奈に「うん」と頷いた。

そして、ポツポツと話し出す。

「すっごく疲れている時は気がつかないけれどね」

「そうじゃない時って、どうしても気がつくの」


華奈は首を傾げた。

それでは、意味がわからない。

また、他の巫女たちも、光の次の言葉をじっと待つ。


その光が口を開いた。

「とにかくね、僕が楓ちゃんの家に泊まると、楓ちゃんは隣の部屋に寝ているんだけどさ、壁が突然、ものすごい音でドーンって揺れるしさ、寝言だと思うけれどさ、お団子なんて言い出すしさ」

「ひどい時は、歌を歌う時もある、それでなかなか眠れなくなる」

巫女たちは最初はあ然、そして手を打って大笑いになっている。

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