第158話豊受大御神様からのご馳走、華奈からの酒は?

異変は、光と巫女たちの服装の変化だけではなかった。

そもそも、御正殿の前、屋外に立っていたはずなのに、いつの間にか板敷の間に丸い御座のようなものの上に、全員が座っている。


由香利が、光に声をかける。

「光君、心配はいりませんよ」

「全てこれは、豊受大御神様のお気持ち」


ただ、光としては、そんなことを言われても、うろたえるばかり。

「わけがわからない、何か怖い」

「豊受大御神様?偉い神様だよね・・・」

「ぼーっとしていると、このナマケモノって叱られそう」

結局、光の考えることは、そんな程度である。


すると、春奈が光に声をかけた。

「ねえ、このナマケモノ!いつまでボンヤリしているの!ここは神前だよ!」


光は、あまりにも「そのまま指摘」の言葉なので、またしてもオロオロするけれど、今度はソフィーから声がかかった。

「ほら、しっかり自分の前を見て!目の前に何かあるのが、まだわからないの?」


光は、そこまで言われたので、ようやく「目の前にあるもの」を見る。

そして、相当に驚いた。

「あ・・・これ・・・何?」


今度は、由紀から声がかけられた。

「光君、これは食事だよ、それもすごく珍しい」

「でも、何となくわかる」


確かに、光と巫女たちの前には、それぞれ、小さなテーブルのようなものがあり、その上には様々な食べ物が置かれている。


光の耳には、次に美紀の声が聞こえてきた。

「光君、これは奈良時代の食事メニュー」

「鯛の焼き物、鮭、海老、タコ、蒸しアワビ、牡蠣」

「麦縄といって素麺の一種」

「里芋を煮たもの、たけのこ,なの花,ふきなどの野菜」

「きゅうりやなすのつけ物,かもの肉の汁」

「牛乳から作られた蘇、チーズのようなもの」

「それから、ご飯」

「お酒は、濁り酒」

「フルーツは、柿、栗、みかん」


この説明に、光が驚いていると、今度は華奈の声が耳元で聞こえてきた。

「光さん、しっかり食べてね」

「これは、由香利さんのお話の通り、豊受大御神様からの御馳走なの」


そして、光が何かを感じて、横を向くと、華奈がピッタリと隣に座り、光の酒器に濁り酒を注いでいる。

光は、素直にお礼を言った。

「あ、華奈ちゃん、ありがとう、お酌をしてもらうなんて」


すると華奈は、途端に真っ赤な顔。

「・・・えっとね・・・まず、このお酒を飲んで・・・光さん・・・」

不思議にも、料理より先に、濁り酒を進めてくる。


光が

「え?・・・あ・・・うん・・・」

と、華奈に注いでもらった濁り酒を一口飲むと、華奈はますます真っ赤な顔。

その上、うれしさ満点の顔に変化した。


華奈は、ますます光に身を寄せた。

そして耳元で

「ねえ、光さんのお酒だけ、他の巫女さんと違うの」

「それ・・・わかる?」

などと言ってくるけれど、光はさっぱりわからない。


その光が、由香利の顔を見ると、由香利はかなり悔しそうな顔。


ルシェールが、光、華奈、由香利の顔を見比べて、察知したようだ。

「もしかして、華奈ちゃん、抜け駆け?」

ルシェールの表情も、落ちつかなくなってきた。

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