第132話春奈と光のお茶デート

ルシェールのフランス家庭料理と、阿修羅と地蔵も加わっての戦闘打ち合わせが終わり、光は自分の部屋に戻った。

また、巫女たちも、それぞれの部屋に戻った。

一時は、光と「冷たい氷の壁」ができて、追い出される寸前だった春奈も、なんとか光の母の部屋で眠ることが出来るので、ホッとしている。


ただ、ホッとした中で、春奈としては、様々考えることがある。

「マジで危なかった、この部屋を追い出されそうになった」

「ソフィーもルシェールも言い方がキツイし」

「結局、あの二人も、この部屋で暮らしたいのかなあ」

「この部屋っていうのか、同じ屋根の下で、光君と過ごしたいんだ」


そう考えて、光の母の写真を見る。

そして、謝った。

「ほんと、ごめんなさい、支えるべき私が、光君を苦しめてしまいました」

「阿修羅様にも地蔵様にも、ご心配をかけてしまいました」

「ソフィーとかルシェールに厳しいことを言われるのも、当たり前で・・・」

春奈は、途中から涙が出て来てしまった。


一方、当の光は、かなり疲れ顔になっている。

「はぁ・・・阿修羅君と地蔵さんの要求は面倒だし」

「これから勉強もしないといけないし」

「英語、数学、物理、化学・・・」

「そうだ、ピアノの練習もあるし」

「運命と第九の楽譜も読み込まないとなあ・・・感性だけではベートーヴェンは振れないし」

「・・・何から、やればいいのかなあ」

そう思いながらも、結局は真面目な光である。

数学の問題集を開き、解き始めている。



さて、泣き出してしまった春奈は、途中からどうしても光の顔が見たくなった。

「また抜け駆けって、巫女連中に読まれちゃうけど」

「お茶ぐらいは持って行くかな」

「・・・それぐらいはいいよね・・・」

「何も持って行かないと、『受験生に何の差し入れもできない』って

言われそうだし」

と、春奈なりの理由を考え出し、緑茶を淹れて持って行くことにした。


春奈は、しっかり丁寧に淹れた緑茶を持って、光の部屋のドアをノック。

「光君、ちょっと」

そこまで言うのも、少し緊張する。

しかし、寝てしまっていても、お茶だけは持って行こうと思う。


光から声が返ってきた。

「はい、春奈さん、何か?」

と同時に、ゆっくり目にドアが開いた。


春奈は、光の顔を見ただけで、またウルウル状態。

「あの、差し入れ、お茶持ってきたよ」

声も、涙声。


光は、すごくうれしそうな顔。

「わ!飲みたかった!緑茶?」

そして、春奈にとっても、うれしくなる言葉をかけてきた。

「ねえ、春奈さんも一緒に飲もうよ、すっごくいい香りしている」


春奈は、また涙があふれて来てしまったけれど、頷く以外にはない。

結局、光の部屋で、一緒に緑茶を飲むことになった。


お茶を飲みながら、光は春奈に話しかけてきた。

「春奈さんのお茶も大好き」

「すごく落ち着く」

「今、数学の問題で煮詰まっていたので、助かった」


春奈は、ますますうれしい。

少しずつ、光に近寄った。

何より、少しでも、光の近くにいたかった。


「雨降って地固まるかな」

春奈は、古い言葉を、思い出している。

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