第116話ソフィーの指摘で崩れ落ちる春奈

放課後になり、音楽部の練習の時間になった。

しかし、光は苦しそうな顔を変えない。

指揮棒を振るにも、いつものように立てない。

とうとう、椅子を持ち出し、座りながらの指揮になった。


この光の不調には、音楽部顧問の祥子先生も、すぐに気がついた。

そして、光に声をかけた。

「ねえ、光君、体調悪そうだから、指揮は私がするよ、とても見ていられない」

光も、すぐに納得した。

「ごめんなさい、おなかが痛くて、立てないんです」

おなかを抑えて、椅子を持ち、指揮台を降りてしまった。

その様子を、キャサリン、サラ、春麗、華奈などの巫女と音楽部の面々が不安そうに見つめている。



さて、春奈は保健室で、健康診断の書類など、様々の整理点検を行いながら、考えている。

「まあ、光君には、厳しいことを言うけれど、当たり前のこと」

「いろんな人を救うのは、阿修羅の力もあるし、私たち巫女の献身的な協力があるのだから、やって当たり前なの、出来て当たり前なの」

「それを、力を使ったから疲れたなんて、単なるナマケグセに過ぎない」

「いつまでも、ガキじゃないんだから、自覚しないといけない」

「ほんと、これだけのすごい巫女たちに囲まれて、何から何までお世話されているくせに、阿修羅の力を使ったから疲れた?」

「甘えるにも程がある」


ソフィーが、事件調査が終わったらしい。

学園に到着、春奈がいる保健室に入って来た。

ソフィー

「筋ものの、トラックだった」

「また、どこかで騒動を起こそうとしたのかな」


春奈は、うんと頷き

「まあ、何とか無事でよかった」

「光君も、最低限の仕事はしたし、その後は問題があったけれど」

「ほんと、自覚と努力のカケラもない」

「これだけの巫女に支えられて何から何までお世話されて、感謝の一言もない」

「高校三年生の男子としては、失格、どうにもならないほど、アホ」

結局、メチャクチャに光の文句を言っている。


ただ、ソフィーは、その春奈の言葉には首を横に振る。

「あのさ、春奈さん、私が光君に強く言うのは、あくまでも仕事としての話だよ」

「それに、そこまでは、言いたくない、それは春奈さんの言い過ぎ」

「今の光君は、周囲に巫女さんが増えすぎて、確かに混乱しているけれど」

ソフィーは、春奈の目を強く見た。

春奈が、少し引き気味になる。


ソフィーは言葉を続けた。

「それに、巫女に支えられて、何から何までお世話って、春奈さんは言うけどさ」


春奈は、「うっ」と口ごもり、声が出せない。


ソフィーの言葉は、冷静。

「光君が呼び寄せたんじゃないよ、誰も」

「全部巫女さんのほうから、光君の家に、居候したんだよ」

「よく考えてごらん?春奈さんは一時的にと、圭子さんと史さんに頼まれただけでしょ?」

「光君が春奈さんに頼んだの?そうじゃないでしょ?」

「嫌だったら一緒に住んでいないでしょ?」


春奈は、ますます、声が出ない。


ソフィーは、その春奈に追い打ちをかける。

「光君ね、さっき由紀ちゃんに聞いたら、ルシェールの作ったお弁当も残した」

「あの大好きなルシェールのお弁当を残すんだよ、余程のことさ」

「一日中、おなかを抑えて苦しそう」

「音楽部でも、おなかが痛くて、指揮もできない」

「保健室に言ったらって、言われても」


春奈の目が潤んで来た。


ソフィーは、少し強めの声。

「光君、保健室に行っても、怒られるだけだから、絶対にいかないって、言ったんだって」


春奈は、肩を落としてしまった。

顔をおおって泣き出している。


そして、ソフィーの次の言葉はさらに強烈だった。

「春奈さんのほうが、失格」

「癒しの春奈さんじゃないの、光君を苦しめる春奈さんなの」

「そんなんじゃ、邪魔になるだけ、害になるだけ、いざっという時に光君が力を振るえないもの」

「世界の安全と平和の邪魔にしかならない」


春奈は、崩れ落ちてしまった。

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