第112話下を向いて歩く光と巫女、そしていきなり走り出す光

それでも、朝食は終わり、通学をしなければならない。

いつものように、光は由紀、キャサリン、サラ、春麗に囲まれて歩きはじめる。


華奈は、後ろを歩きながら、ブツクサ言い始めた。

「ソフィーも、春奈さんも、由香利さんも言いすぎだって」

「あそこまで叱らなくてもいい」

「ほんと、可哀そうだった」


ソフィーは、まだ厳しい顔。

「いいの、光君だって、それをわかってもらわないと」

春奈もそんな感じ

「去年の夏だって、晃子さんのマンションにホイホイ出かけて、とんでもないことになりかけたでしょ?ガツンと言うのは当たり前」

由香利も厳しい。

「光君の安全確保って、光君だけの問題じゃないの、華奈ちゃんも、それをわかりなさい」


ただ、ルシェールも、ハラハラしている。

「でもさ、あの光君だよ?」

「お母さんのことで、ずーっと悩んで沈み込んで暮らしていた光君だよ」

「そんな光君に、光君がヘマをして、みんなに迷惑をかけるとか、世界の安全が危険にさらされるなんて言ったら、また傷をほじくり返しちゃうよ」

「せっかく出血が止まって、カサブタ程度になったのに」


しかし、ソフィーは引かない。

「だめだって、ルシェール、男の子だもの、強くあらねば」


春奈も、厳しい顔で、ルシェールの意見を否定した。

「だって仕方ないじゃない、そういう運命っていうか、星の下に生まれたんだから、それにこれだけの巫女に協力してもらって、ご飯から何から全部お世話してもらっているんだから」


由香利は、それでもルシェールの意見を聞く。

「確かに、言い過ぎたかなあ、一年生の時なんて、すっごいウブでねえ」

「で、ウブなんだけど、心に壁があって・・・」

「リスクも巫女さんも、これだけ増えると、神経がまいっちゃうのかなあ」


光の隣を「警護結界」で歩く由紀も、去年の夏の光を思い出している。

「毎日、お昼はフルーツクリームサンドだけ」

「体育の時間で、外に出ると、10分持たない、そのまま保健室、春奈さんのお世話」

「そりゃそうさ、朝ごはんは食べてこないし、夜だって、コンビニでおにぎり一個か二個だったんでしょ?」

「冷蔵庫には、水ぐらいしか入っていないとかさ」

「光君、確かに疲れている顔をしている」


そして、同じように「警護結界」で歩く、キャサリン・サラ・春麗も、下を向き元気なく歩く光を心配そうに見ている。


キャサリン

「去年までのことは、なんとなく知っているけれど、あれは言い過ぎ」

サラ

「心の傷ってのは、簡単には修復しない、それを知っているから私たちも慎重に接しているのに」

春麗は、泣き出している。

「あの言い方は、可哀そうすぎ、なんでもかんでも光君が悪いみたいに言っている、光君がリスクに動いて困るんだったら、その前に自分で動かないと、自分たちだって巫女でしょ?いつも事後で怒ってばかり」


巫女たちの様々な顔は、そこまでだった。


いきなり異変が発生した。

光は、突然、血相を変えて走り出してしまった。


その光を、キャサリン・サラ・春麗が猛スピードで追いかける。

それに由紀、華奈、由香利も続く。

ソフィーは、ムッとした顔になったけれど、「何か」を感じたようだ。

その背中に羽を生やし、空に浮かび上がっている。


ただ、春奈だけは、少し遅れてしまった。

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