第111話お叱りを受け、シュンとなる光

それでも、ソフィーがルシェールに尋ねた。

「光君にしろ、巫女たちにしろ、政府の警護対象なの」

「交通手段も教えて欲しい」


ルシェールは、にっこりと笑う。

「はい、大丈夫です、教会が責任を持ちまして、送迎します」

「悪霊など、絶対に寄りつけない程の祈祷車両です」

と、そこまでは良かった。

やはり、ソフィーも他の巫女たちの「すごく気に入らない表情」も気になったらしい。

少々、苦笑の後、

「ふ・・・仕方ないですね、巫女様たちも心配です」

「完全祈祷バスにて、教会までは来てもらいます」


途端に、ルシェール以外の巫女たちの表情が元に戻ったけれど、肝心の光の顔がパッとしない。

おまけに文句まで言い始めた。


「ねえ、ルシェールも、みんなもさ」

「どうして教会に行くぐらいで、完全祈祷車だことのバスって言うの?」

「すっごい面倒だって、そんなの」

「メトロで行けば十分、お金もかからないし、時間もそのほうが速い」

「車だと渋滞するとか、信号だとか、超面倒」

・・・・とにかくグズグズと言い始めてしまった。


しかし、これには、ソフィーをはじめとして、全ての巫女が呆れた。

巫女全員が、「このアホ!」と思っている雰囲気が充満している。


そしてまずソフィーの口調がメチャクチャにきつい。

「あ・の・さ!光君!」

「昨日だって、とんでもないことに巻き込まれたでしょ?」

「それも含めて、光君は不用意なことをし過ぎるって、本当は昨日の夜は春奈さんと、重々、大説教しようと思ったの」

「それでも、光君は、疲れすぎてて、華奈ちゃんの鏡の秘法と春麗の四川料理で、回復ギリギリだったから、遠慮したんだよ?」

「それわかっているの?」


光は「うっ・・・」とウロタエ顔。


春奈も、顔を真っ赤にして、ソフィーに続いた。

「ソフィーの言う通りだよ、光君」

「どれだけ心配しているのか、わかっているの?」

「光君の無事は、光君だけの無事じゃないんだよ」

「ここにいる巫女さんたちだけのものじゃなくてさ」

「ほんと、無防備、無神経のカタマリ!」


由香利も光を責めた。

「光君だって、わかっているでしょ?」

「混乱の蠅の神、ベルゼブブが相手なんだよ」

「どこで何をしてくるのかわからないの」

「メトロのお客さんにだって危害が発生する」


他の巫女たちも、光を責めたかったようだ。

しかし、それは難しかった。

何しろ、三人の年上巫女に責められて、光が意気消沈してしまった。

とにかく、下を向いてしまったのである。


それでも、ルシェールが、怒りを抑えた。

やさしく光に声をかけた。

「わかった?光君」

「みんな、すごく心配してのことなの」

「とにかく、ベルゼブブをやっつけるまでは、我慢してね」

そう言って、光の背中をトントンと叩き、なでている。


少しして、ようやく光が口を開いた。

「ごめんなさい、つい面倒になって」

「みんなの言う通りにする」


そんな光を見て、華奈は思った。

「光さん、ちょっと、疲れているかもしれない」

「いつもは、あんな変な文句、言わないもの」

華奈は、光の表情の暗さが、心配で仕方がない。

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