第107話春麗と華奈 圭子叔母の心配

「四川風エビの頭のスープ」

「牛肉の唐辛子汁煮」

「細切り豚肉の豆板醤炒め」

「角形骨付き豚バラ肉の直火焼き」

春麗のテキパキとした指導で、巫女たちが、キッチンの中を動き回る。


料理は苦手の部類の華奈も、少しずつ慣れてきた様子。

華奈は、動き回りながら思った。

「うん、とにかく辛そうだけど、美味しそうだ」

「これなら、ボンヤリ光さんが、ピリッとして元気になる」

「案外、これ、正解かもしれない」


そんな華奈に春麗が声をかけた。

「ところで、華奈ちゃん、デザートも作ろう」

春麗は、かなりニコニコしている。


華奈は、そんな春麗の笑顔がうれしい。

「わ!春麗って、可愛いなあ、ほんと中国美少女って感じ」

「それに他の巫女と違ってやさしいし、変な文句を言わないし」

華奈も、にっこりと春麗の顔を見る。


春麗もまた、華奈の笑顔にうれしそうな顔でデザートについて話し出す。

「あのね、牛肉餡入り油焼き饅頭」

「牛肉を細かくたたいてに、香辛料を加えて、餅の形に包んでゆっくり油焼きするの、甘くはないよ、成都の名物点心」


ただ、華奈としては、それを聞いてもよくわからない。

「うん!春麗!作り方教えて!」

飛びつくように春麗の横に立ち、一緒に作り始めている。



さて、キッチンは、そんな感じで忙しそう。

光は、入ると「邪魔」と怒られそうなので、ボンヤリとしている。

しかし、ボンヤリも長くは続かなかった。

スマホに、奈良の圭子叔母から、コールが入ったのである。


圭子は、少し不安気な声。

「ねえ、光君、本当に大丈夫なの?」

「渋谷駅の近くで、阿修羅が出て来て、とんでもないことをしたんでしょ?」

「私もなんとなく見えたからさ」

「もうね、心臓がドキドキしちゃってさ」

「その後の回復が心配でしょうがない」


光は、少し困った。

「圭子叔母さん、大丈夫です、華奈ちゃんの鏡の秘法で何とか回復しました」

「そこまで、心配するほどじゃないです」

「すくなくとも、大聖堂とか富士山麓の時ほどの、疲れ方ではないです」

とにかく、大丈夫と言う。


圭子は、それでも不安な声。

「まあ、そういう不安があるから、今度奈良に来てもらうんだけどさ」

「おまけに地震も珍しく、大きいのがあって」

「東大寺戒壇院の四天王さんも、被害だよ」

「多聞天立像が右手に載せている宝塔が落ちたりしてさ」

「幸い、損傷なないみたいだけどさ」

「とにかく敵は、強いよ」

 

光は、またしても返事に困ったけれど、話題を変えることにした。

「ところで、それもあって、もう少し策を加えようと思います」

「土日で奈良に行きます、巫女全員が行くので、ホテルとかお願いしたいんです、急で申し訳ありません」


それについては、圭子叔母の反応は、即座だった。

「うん、わかった、とびきり結界が強いところを抑える」

しかし、

「それはいいんだけどさ」と意味深な声を出す。


光が「え?」と聞き返すと、圭子叔母が含みのある感じ。

「とにかく、キャサリン、サラ、春麗を家に連れてきて」

「特別に渡すものがある」

光は、首を傾げている。

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