第87話第九練習開始

さて、光たち音楽部員は、春奈とソフィーの両年増巫女などの思惑には、全く関心が無い。

廊下をそのまま歩き、音楽室に入った。

また、校長も「どうしても聞きたい」ということなので、一緒に音楽室に入った。


その音楽室に入ると、既に音楽部員たちが第九の個人練習を行っている。


光は、その様子を見て、うれしそうな顔。

「うん、みんなやる気あるなあ、これならいいな」


顧問の祥子先生も光の前に歩いて来た。

祥子先生は、校長に頭を下げながら

「私も、光君の第九って、すごいワクワクなの」


校長も、校長室での難しい顔はどこへやら、柔らかい顔になっている。

「とにかく初見の演奏なので、精度は問題ではありません」

「第九の響きを、生で聞きたくてね」


光は、そんな先生方に頭を下げて、指揮台にのぼった。

そして楽譜を広げながら、音楽部全員に指示をはじめる。


「今日は、第九の初見練習ということなので、まずは一回、全四楽章を通します」

「尚、合唱部は、二楽章が終わったら、その合間に皆さんのバックに入ってもらいます」

「それと注意してほしいのは、リズムを間違えないこと、今回はそれだけを考えて、演奏してください」


そこまで指示を行って光は、指揮棒を胸の前に持つと、楽団員全員の顔が引き締まった。


そして、光の指揮による第九の第一楽章が始まった。


祥子

「ふぅ・・・いいテンポだなあ・・・」

校長

「深い森の中に、うっすらと太陽の光が差し込んでくるような、神聖な雰囲気を感じる」

第九の第一楽章の最初は、神妙な感じ、祥子先生も校長も目を閉じて「味わっている」様子。


次第に、曲が進む。

祥子

「うん、響かせ方がいいなあ、リズムを正確にと指示したのが成功している」

校長も、それは感じたらしい。

「多少音程のズレは初見だから仕方ない、しかしリズムがしっかりしているから、響きがいい」

祥子

「メロディの歌わせ方も、力強い、第九の音楽の奥深さと大きさがしっかりと伝わって来る」

校長

「なんだかんだと言って、超有名な曲だし、部員たちも練習してきたのかなあ」

「まず初見とは思えない程、合ってきている」


祥子先生と校長の、つぶやきは、そこで終わった。

校長先生の言う通り、「初見とは思えない出来」、最初は少々乱れた部分があったけれど、第一楽章の中頃から、しっかり整ってしまった。

そうなると、ただ聞いていたいと思う演奏に変わる。


そんな演奏を聞きたくなってしまったらしい。

春奈も、そっと音楽室に入って来た。

そして、流麗に指揮棒を振る光を見る。


「ほーーー・・・可愛い」

「音楽なら、文句言えないなあ、これも光君の太古からの妻の楽しみだ」

「でも、さっき変なことを言ったから、家に帰ったら、ソフィーと一緒に大説教するんだ、ああ、楽しみ」

春奈は、光の音楽を聞くという楽しみと、後で「大説教」をするという楽しみで、ご機嫌な顔になっている。

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