第80話通学車両内では音楽の話限定

ソフィーも光の視線に、すぐに気がついた。

そして光に声をかけてきた。

「とにかくセキュリティ対策だね、全般的な強化と警戒指示」

光が、ソフィーに頷くと、早速何かの連絡を取っている。


光は、さらにソフィーに話しかける。

「心配なのは、交通機関とか病院とか、生活に直結するシステム」

「物流系もそうかなあ、それと各マスコミ」

「まずは、そこから」

とまで話して、光は黙った。


ソフィーも、またソフィーと光の会話を聞きとっていた巫女たちも、その理由は理解した。

目の前には、駅。

これから私鉄に乗るので、周囲には不特定多数の通勤、通学客に囲まれることになる。

八方除けの結界に包まれ、外部の人間から会話が聞き取れないとはいえ、仕草など見られる場合もある。

何しろ神出鬼没の混乱、混沌系の相手に対応するためには、不用意な動き一つでも、危険が発生するため、避けなければならないのである。


「それでも」

光は、由紀に声をかけた。

由紀が光の顔を見ると

光「今日の練習の話でもしようか、それならば、問題がない」


由紀も、すぐに光の意図を理解した。

そして巫女全員に、「音楽の練習の話限定」とのテレパシーを送り、全員が頷いた時点で、八方除けの結界を解いた。


途端に、話題も音楽の話に変わった。

まず春奈が光に

「ねえ、光君、今日は練習見学していい?たまには第九を生で聞きたいの」


光が頷くと、次はルシェールが由紀に声をかけた。

「合唱で参加したいから、由紀さん、合唱部に紹介して欲しいの」

由紀が、ルシェールにニッコリと頷くと、今度は由香利。

「じゃあ、私も時間を合わせるから、由紀さん、一緒に」

由紀は、ここでもしっかりと頷く。


華奈は光に

「ねえ、今日は何楽章を練習するの?」

と、具体的な質問。

光は、少し考えて

「そうだなあ、今日は出来ても出来なくても、第一楽章から第四楽章まで、通しでやるかな」

「それをやることによって、現在の状態がわかる」

と、まともな普通の答え。


キャサリンは、その目が輝いた。

「でも、光君の指揮って初めてなので、すごく楽しみなんです」

サラは、またうれしそうな顔。

「私はチェロなので、すごく近い、ドキドキしてきました」

春麗も同じようにれしそうな顔。

「うん、第九のフルートを光君の指揮で、吹けるなんて最高だなあ」


そんな状態で、話題は全て今日の第九の練習に変わった。

光は、また全員に

「とにかく僕も振ってみないとわからない感じ」

「最初は楽譜に忠実って感じに振ってみる」


巫女たちも、それには何も言わなかった。

とにかく、今は光の第九の指揮に、ワクワクしている状態で、振り方とかテンポは光に任せるしかないのである。


さて、そのような通学車両の中では、「音楽だけの話題」に限定した一行は、

学園に到着した。

いつもの学生たちの賑やかなキャンパスを歩く中、光はまた何かを考え始めている。


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