第73話薔薇のお風呂 光のため息

キャサリンがメイン料理担当の夕食と、由香利の父親でもある「江戸の大親分」との話もつき、一旦は散会となるけれど、巫女たちにはもう一つ楽しみがあるようだ。

キャサリンが手配、そして築地での戦闘に参加しなかった巫女たちが準備した薔薇を浮かべたお風呂である。


春奈が説明をする。

「キャサリンの指定通りに、薔薇のお風呂を地下の大きなお風呂にセッティングしたよ、薔薇はアメリカ大使館から届いた、全員で一緒に入れる」

由紀はニコニコ顔。

「とにかく香りが華やか、ゴージャスって感じ」

ルシェールも

「美肌効果が高いとの話です」

サラもうれしそうな顔。

「何と言っても、有名な絶世の美女と言われるクレオパトラにも愛されたお風呂です」

由香利も興味津々といった顔。

「戦闘の気分もスッキリ、親父との話もスムーズに決まって、これは楽しいお風呂になる」

ただ、華奈はちょっと不安顔。

「一緒に入っても、みんなすっごいスタイルいいし・・・私恥ずかしい」

そんな華奈を春麗がなぐさめる。

「華奈ちゃん、心配してどうするの?華奈ちゃんには華奈ちゃんの魅力があるんだから」

それを聞いて、華奈も少し顔をあげている。


薔薇風呂で盛り上がる巫女たちの中には、光を心配する巫女もいる。

ソフィー

「ところで、光君は家のお風呂だよね、薔薇は浮かべたの?」


春奈は、それに首を振る。

「いや、あれは巫女さんだけ、光君は薔薇のエキスだけを絞ったお風呂」

「男が薔薇の花が浮かんだお風呂なんて、恥ずかしいって言い張ったから」


ソフィーは、納得したような、しないような感じ。

「まあ、それはそうかなあ、でも光君なら似合うような気もする」


華奈は少し考えた。

「子供の頃は、一緒に入ったけれど、難しいなあ」

「でも、薔薇の香りがする光さんもいいな」


ただ、そんな考えも続かなかった。

巫女たちは一斉に地下の大浴場に移動していくし、華奈としては付いていくしかなかったのである。


さて薔薇の花などは浮かべず、「エキスだけのお風呂」にしてもらった光は、湯船に沈んで、いろいろ考える。


「確かに華やかな香り、女性にはいいのかなあ」

「それにしても、これだけ巫女が集まると、メチャ神経を使うなあ」

「全員の顔を立て、トラブルがないようにしないと」

「阿修羅君が言っていたけれど、そうしないと、混沌の神に対抗できないらしい、でも、面倒」

「何とかして、昔のような自由な生活をしたいなあ」

「そんなことを言うと、まずソフィーが怒る、警護が何とかって」

「春奈さんも怒る、すごく怖いし」

「由香利さんも怖い時がある、逆らえない感じ」

「ルシェールは、任せられるタイプだけどなあ、自由な生活は認めてくれない」

「由紀さんも、安心できるけれど、自由は認めないね、きっと」

「華奈ちゃんだと・・・泣いて怒ってくるしなあ」

「キャサリン、サラ、春麗は、国際関係とか、今後の日本を離れた時のこともあるし、無碍にはできない」


そこまで考えて、光は「はぁ・・・」と深いため息をつく。

それでも気分を変えようと思った。


「いいや、巫女さんたちのことは」

「まずは音楽部のことを考えよう」

「やはり第九を振るんだから、小沢先生のところに行くかなあ」

「その前に、もう一度楽譜をしっかり読もうかな」

そこまで思った時点で、光の心から「巫女たちへのストレス」は消えた。

少し、スッキリとした表情になっている。

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