第63話阿修羅が見せたいもの

上空に浮かび、キャサリン、サラ、春麗の戦闘を見ていた阿修羅が地上に降り立った。

そして、そのリーダー格の男をきつく見据えた。


リーダー格の男は、ますます震えた。

「こいつは・・・何者?」

「いや・・・どこかで見たことがある・・・」

「奈良?阿修羅?」

「いや・・・あれは、単なる像に過ぎない」

「その像が何故、動く?」


「ふ・・・」

その阿修羅の口元が動いた。

そして

「おい、砂漠の暗殺教団とやら・・・」

「この日本では、思うようにテロも事件も起こせなかったようだな」

阿修羅の声が低い。


リーダー格の男の目は、阿修羅に吸い寄せられている。


阿修羅は、再び、口を開いた。

「お前に、見せたいものがある」


リーダー格の男は「え?」と思い、阿修羅を見ると、阿修羅の目が恐ろしいほどに光った。

そして、その目を見た瞬間、リーダー格の男の視界は、全く異なる世界を捉えている。


「う・・・ここはどこだ?」

「日本の築地ではないのか?」

「というか、故郷?」

リーダー格の男に見える風景は、どう見ても日本の築地ではない。

それよりも、生まれ育ったメソポタミア北部の市街地に見える。


「うわ!」

いきなり、背中を棍棒のようなもので叩かれた。

痛みで横たわると、無数の人々が、棍棒、刀、拳銃を構えて、自分を見据えている。

それも、日本人ではない。

どうみても、生まれ故郷の人々の顔。


「何だ!お前らは!」

男が怒鳴った瞬間、上空が真っ赤になった。


そして、大爆風に包まれた。

「グワ!」

声を出す余裕もなかった。


その爆風の中で、自分の足、腕、胴も吹き飛んでいく。

そして頭は、胸から上の部分だけの自分が、瓦礫の中に、叩きつけられた。


次の瞬間、男は自分の前に整列する故郷の人々を見た。

よく見ると、親戚もいる。

親や妻、子、兄弟、親友の顔も並んでいる。


そして、自分の手を見ると、血が滴るナイフ。

「おい!何故、この手が動く?」

そんな疑問もどうにもならない。

自分の手が、勝手に動き、整列する人々の首を切っていく。

涙ながらに叫ぶ人々の首を、切っていく。

もはや、何も感じない。

ついに親の首を切り、兄弟の首を切った。

妻の首も切り、幼いわが子の首も切った。


「何故だ・・・何故・・・俺は・・・」

リーダー格の男は、ほぼ狂乱状態。

足腰もガクガク、もはや何がどうなっているのか、わからない。


阿修羅の低い声が、リーダー格の頭に響いた。

「お前には、一生、その場面を見続けてもらうことになる」

リーダー格の男は、その場で崩れ落ちてしまった。

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