第39話春奈と光が、いい雰囲気に

春奈は、真顔の光を見て、しばらく何を言っていいのかわからない。

光は、真顔のまま、ショッピングカートを引いているだけ。

それでも、光が春奈に少し近づいた。

春奈は、気持がドキドキしてしまって、身体を動かせない。

光が春奈に声をかけた。

「あとで、じっくりお話しよう」

「ここだと、話せないし」


春奈も、頷く。

さすがにスーパーマーケットの中で、難しい話も困難。

それでなくても、光と春奈の微妙な雰囲気を見れば、それを見た華奈が何を言い出すのかわからない。


光は、話題を変えた。

「それでね、学校で、奈良のにゅうめんって言ったけれど、ここで売っているかなあ」


春奈も、ようやく思い出した。

そして、突然、ホロッとしてしまう。

「光君、にゅうめん好きなの?」

光に聞きたくなった。


春奈自身、それほど、にゅうめんが美味しいものとは思っていない。

そもそも、奈良の料理は懐かしいし美味しいけれど、全国の様々な美味と比べて、段違いに美味しいとは思っていない。


光は、少し恥ずかしそうな顔になる。

「うん、好きだよ、それでね」

光は、春奈の顔を、また真顔で見る。


春奈は、またドキンと胸が鳴った。

「それでって何?」

足元がふらつくぐらいの緊張感が、春奈を包んだ。


光は少し笑った。

「春奈さんの味付けが大好き、すっごく疲れている時でも、春奈さんの料理で元気が出る、本当に僕には美味しい」


春奈は、その言葉で、身体全体の緊張がほどけた。

「人前じゃなかったら、泣いちゃう」と思うけれど、泣けないのが本当に口惜しい。


ただ、そう思うけれど、当の光は奈良のにゅうめんを探して、キョロキョロをはじめている。


「光君」

春奈は、光に声をかけた。

光が、「え?」と振り向いた途端、光と腕を組んでしまった。

そして、その腕の力を強めた。

「負担じゃないの、私は光君と一緒にいたいの」

「とにかく離れたくないの、寂しいこと言わないでよ」

春奈の声が震えた。


光は、ホッとした顔。

「ありがとう、すごく心配だった」

「春奈さんが、一番、安心する」


春奈は、涙が落ちそうになる。

言葉も出ない状態。


カートを引きながら、光も春奈の腕を強く組んだ。

「でも、買い出しもしないとさ」

春奈も、素直に頷く。

「そうだね、にゅうめんだけじゃ足りないよね」

「にゅうめんに合うのは・・・」

春奈

「普通の、おばんざいみたいな感じかなあ」

・・・・

少し、微妙な二人は、いつの間にか、いい雰囲気になっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます