第36話怠慢な地域警察

途端に佐野警察官の表情が変わった。

「マジか・・・この子が・・・あの・・・光君・・・」

佐野警察官は、畳の上に崩れ落ちてしまった。


坂口が、崩れ落ちてしまった佐野警察官に声をかけた。

「いいか、佐野」

「全ての動画を、全部取ってある」

「それから、お前の光君に対する暴言もな」


震えてしまって、声も出せない佐野警察官に、坂口が更に追い打ちをかける。

「まあ、動画を録画というよりは」

と言って、一旦光の顔を見て、言葉を続けた。

「録画と言うよりは、実況中継になる」

「その実況を見る機関も言っておくか」


坂口は、フッと笑い

「まず、警察庁本庁、そして公安庁、そして官邸」

「光君が、録画する時は、そうなる」

坂口からの「追い打ち」の言葉で、佐野警察官は、放心状態になってしまった。


光は、坂口に声をかけた。

「坂口さん、この人たち、どうします?」

坂口は、また笑った。

「大丈夫です、光君、まずソフィーさんが来るかなあ」

と言いながら自分のスマホ、おそらくメールを見ている。


坂口の言う通り、すぐにソフィーが道場に入ってきた。

そしてまず光に

「もう!忙しいったらありゃしない!」

「せっかく引っ越しの荷物を整理していたら、いきなり何?」

「私、少し光君に怒ったから、後で膝枕させるよ!」

「覚悟しなさい!」

と、わけのわからない言葉を言いながら、佐野警察官の前に立った。


ソフィーは、公安特別調査官の身分証をサッと提示。

そして、ものすごい勢いで、佐野警察官を責めはじめた。

「あのさ、坂口さんにも言われたと思うけどさ、ここの管内ってストーカー被害とか警察が全く捜査しないって苦情が、メチャ多いの!」

「それで調べたらね、あちこちの防犯カメラに、ここの道場の師範代から弟子まで、それらしきストーカーをやって写りまくっているの!」

「一体全体、何を調べたの?何も捜査をしないで証拠がないって被害者に言い切ったの?」

「それから、暴行事件も、空き巣事件も同じこと、あんたね、署長も含めて怠慢の極み」

「地域清掃の手伝とか、交通安全の手伝いをするからって、それで何も悪いことはしないって、どうして考えが甘いの?」

佐野警察官は、とうとう泣き出してしまった。

身体はガクガクと震え、返事も何もできない状態。

道場に入ってきた時の、居丈高な雰囲気は、全く消えている。


光が、ソフィーに声をかけた。

「ソフィー、膝枕は約束する」

「でも、僕たちも用事があるの」

「それでさ、ここの道場を出てもいい?」

「だって、対応したのってさ、あのおっさんだけだし」


ソフィーは少し浮かない様子。

「まあ、地域のゴミ掃除にはなったけどさ」

「でもね、阿形だけでしょ?かろうじて何かをできたのは」

とまで言うと、金剛力士の吽形は、つまらなさそうな顔で顔をしかめる。

キャサリン・サラ・春麗も本当につまらなさそうな顔になっている。


光も、そんな「何もしなかった、何もする必要がなかった面々」の顔が気になったらしい。

光は、坂口の顔を見た。

「ねえ、坂口さん、警察庁本部とか、大きな道場を貸して欲しいんです」

「そうしないと、この連中がおさまりそうにない」

「今日じゃなくても、いいんです」


坂口は、苦笑した。

そして「光君も、みんなの興味の的だよ、ぜひ、来て欲しいなあ」

「選手もたくさん、集めておくから」

光は、途端に面倒そうな顔になっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます