第33話史上最強空手VS金剛力士(3)

師範代は、顔が真っ青になった。

そして弟子たちに

「これはマグレだ!俺たちは史上最強なんだ!」

「それか、あの大男は、スウェットの足の下に何か鉄板でもつけているに違いない」

「そうでなければ、俺たちの史上最強の空手が、あんなことになるわけがない」


弟子たちも、スネをおさえ、口から泡を吹いている仲間の選手に、何も言うことができない。

「・・・とにかくマグレだ・・・」

と口走るけれど、結局、のたうち回る仲間を助けようるなど、手当をしようとする気持はない様子。


そんな空手道場の様子を、呆れた顔で見ていた坂口が口を開いた。

「とにかく、偶然なんだろ?マグレだろ?」

「それから、あの大男の足の下を疑うんだったら」

とまで言って、阿形の顔を見た。


阿形も、坂口の意図はわかったようだ。

「とにかく、何も感じなかったぞ」

「あれは蹴りか?あれが史上最強の蹴りか?」

と言いながら、スウェットの裾をめくる。

そして、何も鉄板などつけていないことを、空手道場側に見せつける。


阿形は、今度は師範代に声をかけた。

「弟子なんぞ、面白くない」

「お前が来い」

「ただ・・・お前とて・・・」

とにかくつまらなさそうな顔をする。


師範代は、そこまで言われると、立ち上がらなくてはならないと思ったようだ。

何しろ、弟子たちの前で、恥ずかしい真似はできない。

「ふ・・・たまたまだ・・・」

「弟子が、ああなったからと言ってもな、あいつは未熟で練習不足なだけだ」

「今度こそ、史上最強ということを教えてやる」

そして、立ち上がり、かなり緊張した表情で阿形の前に立つ。


師範代は考えた。

「この大男は、とにかく身体が頑固らしい」

「しかし、人間の身体というものは、どれほど頑固であっても、必ず急所という、いくつかのポイントがある」

「そこをめがけて、瞬速の突きをする」

「そうすれば、この大男だって・・・必ず倒せる」

「何しろ、さっきは、この大男は一歩も動いていない」

「防御の姿勢も何もしない、あるいは知らないのか」

「それに、蹴りをかわすだけのスピードを持っていない」

「つまり、この大男は、ノロマなんだ」

そう考えると、師範代には余裕が出てきた。

そして、余裕が出てくれば、自然と笑みも出る。


じっと師範代を見ていた阿形が、口を開いた。

「おい、そこの師範代とやら」

「急所を狙うのか?」

「そうなるとな・・・」

阿形は、そこで少し笑う。


師範代は、まず驚き、そして怒った。

「・・・何故・・・急所を狙うのがわかる?」

「それに、何故、ここで笑う」

「こいつ!この俺を馬鹿にしているのか!」

「この史上最強の空手の急所打ちを馬鹿にしているのか!」

この時点で、師範代は、全く加減も何もない。

頭の中には「一撃必殺!」その言葉だけが、かけめぐる。


すると阿形が、また口を開いた。

「さっきみたいに、疑われてもなんだから」

そして意味不明となり、阿形を見つめるしかない師範代、空手道場の弟子たちをチラリと見て、阿形は、スウェットの上を脱いでしまった。


それを見た光の目が輝いた。

「相変わらず、顔もゴツけりゃ、身体もゴツい」

光の言葉通り、金剛力士の筋骨隆々の肉体が、出現となっている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます