阿修羅様と光君 聖と闇の呪術

舞夢

第1話始業式の朝

午前七時、春奈は、本当にヤキモキしている。

その理由としては、今日は始業式というのに、例によって光が起きてこないため。

「全く、高校3年生になったというのに、全く自覚も自制心も努力する心のカケラもない」

「その意味では、全く成長がない」

「でも、そんなことを言ったら、あの口うるさい母さんとか、他の巫女連中から、何を言われるかわからない」

「どうせ言うことは決まってる・・・『光君のウカツさは生まれつき』・・・『代わりに私が住むから、出ていって』とか『生活指導が出来ない保健室の先生って何?』とか・・・」

そこまで考えて、春奈はますます、アセリだした。

「あーーー!もうあのアホの光君なんて、ベッドから引きずり下ろして、そのまま床に頭ゴツンさせちゃおう!」

「おそらく痛いぐらいは言うだろうから、それで目覚める」

「・・・で、この春奈さんが、光君をギュッと抱きしめて、よしよし・・・と・・・ふふん・・・」

そんなことを思いついた春奈は、光が降りてくるのを待ちきれなくなった。

そして、二階に向けて一歩足を踏み出した瞬間である。


いきなりチャイムが鳴った。

そして、即座に玄関がガチャリ。

誰かは、考えなくても、見なくてもわかる。

家に入ってくるなり、いつもの華奈の大声三連発が始まった。

「ほらーーー!何やっているの!光さん!」

「妻が迎えに来たっていうのに、グズグズしないで!」

「春奈さんが、朝ごはん早く食べたいって!なんかトマト風味の変わったのだよ!」そして、そのまま階段を駆け上がっていく。


春奈は、またしても呆れた。

「何?あの短めにしたスカート!」

「あの妻って表現は、全く通用しない表現だ」

「春奈さんが食べたいって何?本当は自分が二回目の朝ごはん食べたいんでしょ?一体何さ、自分では玉子焼きも焦がしちゃうくせに」

「トマト風味の変わったのって何?リゾットも知らないの?」

「それにしても、少しだけボリュームアップしたのかなあ」

春奈の見たとおり、華奈は少々ボリュームアップしたらしい。

そして、それが自慢なのか、光の部屋に入っても、大騒ぎをしている。

「わーーー!新学期はじめから遅刻になるって!」

「ねえ!早く!着替えてはいるけどさ!」

「ほら!ネクタイ曲がっている!うんうん、そうそう!」

「そしたら、私を見て!光さん!少し変わったでしょ!」

「ここのあたりとか、ほら!ここ!どう?セクシーになったでしょ?」


春奈は、またしても呆れた。

「ああいうことってさ、自分から普通言わないでしょ?」

「自分から言わないと、認めてもらえないのかな、ふふん、そんな程度さ」

しかし、呆れていた途中から、基本的なことを思い出した。

「でもさ・・・どうせ、光君のことだ、寝ぼけて誰が騒いでいるかわからないんだよね」

「だったら、気にすることないなあ」

と、春奈が考えていると、ようやくドタドタと階段を降りてくる音が聞こえてきた。


そして、光のいつもの間延びした声が聞こえてきた。

「春奈さん、お早うございます、少し寝坊してごめんなさい」


しかし、この登校前の忙しい時間に、そんな「間延び」に付き合っているわけにはいかない。

春奈は、ここで厳しく言わなければならないと思った。

「ほら!そこの亀君!」

「さっさと食べて!もう、高校3年生なんだから甘やかさないよ」

口調も厳し目、その効果もあった。


光は、ビクッと身体を震わせ、懸命に朝食のトマトリゾットを食べ始めた。

春奈は、そんな光のビクつきにニンマリ。


そして華奈にも口撃を行う。

「これはね、トマトリゾットと言って、朝の目覚めには最適でね、まあね、こういう思いやりある朝ごはんが作れてはじめて、妻とか何とかっていうの」

華奈も、一瞬だけビクッとした。しかし、それが一瞬だけなのが、華奈の華奈たる所以。

本当に美味しいらしく、あっという間にペロリ、ついでに二杯目を狙うような目で春奈を見ているのである。

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