自由に歩いて愛して
題名はPYGの名曲から。
コンビニに行ってパスタを買ったら、店員が東南アジア系の若者だった。
「お箸かフォークつけますか?」と聞かれたので断ったら、どういうわけか通じない。
「要らないです」「はい?」みたいなやり取りを2回ほどしてから、諦めて「付けてください」と言ったら、何も入れずに渡してきた。どういうことだ。
人との意思疎通が難しい今日この頃である。
さて、流血に続いて今回は怪我をした話である。苦手な方は読まないで欲しい。私が書くのを辞める選択肢はない。
その年は稼働が三つほど重なっていた。そのうち二つは千葉で、一つが奈良だった。スケジュールを色々と組み直した結果、千葉の仕事を終えてから、奈良に合流することになった。皆より遅れて入っても問題は無いが、いつもの様に誰も助けてはくれない。要するに「遅れてもいいけど、仕事は間に合わせろよ」というやつである。
合流日の前夜、スーツケースに荷物を入れたり、洗濯物を片付けたりしていた。狭い部屋でそんなことをしていたので、うっかり室内に置いてある折りたたみ椅子に足を引っ掛けた。
その場に転倒しただけならまだしも、その拍子に椅子が畳まれてしまった。木製だが、厚く作られた枠に足の指が挟まれて、右の爪が全部ひび割れた。
病院に行くほど重傷ではないし、そもそも時刻は年末の土曜日の深夜。周りに診てくれる病院はない。
仕方ないので絆創膏とワセリンで指を補強して、その日は寝た。
問題は翌日、新幹線に乗る時に起きた。
私の利き手と利き足は右である。そして混み合う駅で、キャリーケースを引きずるのは危険なので、大抵は体の横に密着させるようにして転がしている。曲がったり登ったりする時には、利き足でケースの下部を引っ掛けたり蹴りあげる。
東京駅のど真ん中で、右足の爪が割れているのも忘れて、いつもの様にケースを蹴りあげた。
死ぬかと思うほど痛かった。
だが、あまり頭が良くないので、痛さから復活して五分後に新幹線の改札の中で同じことをした。自分の愚鈍さがつくづく嫌になった。
現地に着くと、年末なので病院自体もひっそりと静まり返っていた。キャリーケースの音を響かせながら作業部屋まで行くと、プロマネがパソコンと睨み合っていた。
とりあえず手短に到着と現状を伝えようと、明るく声を出す。
「お疲れ様です。右の足の爪を全損してます」
「出落ちかよ」
出落ちだと思うなら、もう帰してくれてもいいんですよ。
そう言いかけた私に、プロマネは病院内の見取り図を手渡した。
「皆、端末設置行ってるから手伝ってきて」
「えー、爪割れてるのに?」
「ここまで来れたんだから平気だろ」
そりゃそうなのだが、ちょっとくらい思いやりが欲しい。そんなことを思いつつ、足を引きずりながら作業部屋を出た。
見取り図には端末設置のマークが五十個はついている。全部設置を終えるのに、夜遅くまでかかりそうだった。
次に同じことがあったら、速やかに左足の爪も割るべきだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます