赤いピンが刺さってる
道を良く訊かれる。
出張中に訊かれることが多い。しかし私もこの土地はビギナーだ。市民ホールがどこにあるかなんて知らない。演芸場の場所も知らない。
日本人ならまだいいが、外国から来た方に聞かれると困る。アイドンノウ、アイドンノウと繰り返しても彼らは諦めてくれない。どうにかして最小限のルートだけでも訊き出そうとする。私は英語は出来ないから、仕方なく「ゴーストレート」と交番とか指さして去る。きっと間違っていない。
「道を訊きやすそうな雰囲気でもあるんですかね?」と一緒に働く人に聞いてみたら、私を見て首を傾げ「いや、それはないな。ヤンキーっぽいし」と言われた。解せない。
「ぼんやりしてるからじゃない?イヤホンとかつけたり、スマフォ見てれば話しかけられないよ」と建設的な意見も貰ったが、それが意味無いことを私は知っている。
いつだったか、交差点で信号が変わるのを待っていたら、二人続けて道を訊かれたことがあった。こっちはキャリーケース引いて、イヤホン嵌めて、スマフォ見てるにも関わらず、だ。
これはもう、私という存在が地図か何かに見えるか、そういう姿のスタンドを背負っているに違いない。よくネットの地図で見るあの赤いピンでもいい。きっとそんなのが私の背中にある。
今日も当然のように道を訊かれた。
「新宿西口駅はどこですか?」
「此処です」
「此処は新宿駅ですよね?」
「でも此処です」
背中のピンは私に説明能力を与えてくれない。
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