炭谷 愛梨 ③

 動画撮影の前に、親水公園について班のみんなで調べてみた。

 正式には大横川親水公園。お父さんが錦糸小に通っていた頃は普通の川だったって言ってた。その川を公園にするために押上から錦糸町までを埋め立てているけれど、釣りが出来たり、せせらぎもあるし、小さな子が水遊びするところもある。木や花も多くて、長い滑り台や噴水広場もあって、遊ぶにはもってこいの場所だ。

 埋め立ては押上側から錦糸町へ向かって、何回かに分けて行ったそうだ。アルカキットや東武ホテルとかを建てるときに、一緒に最後の工事をして完成したのが1993年。公園の廻りが柵じゃなくて堤防(先生は護岸って言ってた)で囲まれてるのを見ると、本当に昔は川だったんだなって思う。

 もう一つ、自転車で通る人が多いのもここの特徴だ。錦糸町からスカイツリーの近くまで、信号無しで行けるのはとっても便利。考えてみれば、川の上を走ってるのと同じだもんね。


 インタビュー結果を参考にして、実際にどんな動画にするのか場面ごとに絵を描く(その絵を絵コンテというそうだ)作業が一番大変だった。

「俺と高井でオープニングやりたい! コントっぽくっていうか、バラエティーみたいなノリで」

「班でまとめるんだから、ふざけてるのはダメだよ」

 私が言うと、大丈夫だよーと笑いながら水島君は言うけれど、ちょっと怪しい。すぐふざけるからなぁ。リセルと私はそれぞれの台詞をスケッチブックに書いて、読みながら話すことにした。


 撮影を予定していた日が雨で延期になって、十月に入ってしまった。締め切りも近いので、撮影した日に学校へ戻って編集をして、その後で各班の発表をすることになった。

 公園で、たまたま白鷺がいたのでそれを撮影してオープニングに使った。水島君と高井君はコントみたいな演技をしながら、川に入っちゃダメと説明してる。私たちの場面では、カンペを見ながらだったのに台詞を噛んでしまった。ほんの数秒なのに、撮影されていると緊張する。俳優さんってすごいなぁと思ってしまった。

 白鷺を入れたのと台詞を噛んでしまった分、三十秒にはちょっとだけ収まらなかった。もう少しうまく編集すれば収まったかもしれないけれど、私たちにはこれが精いっぱいだ。


 発表は錦糸公園グループから。みんな工夫していて、悠斗の班はスケッチブックに書いた絵を撮影してアニメっぽくしている。芝生の上をごろごろ転がっているのも面白い。壮太の班は、やっぱりというか、自分で仕切っているのが壮太らしい。

 全部見た中では美咲ちゃんの班が一番良かった。

 映像は公園だけで、誰も映っていないのはこの班だけだった。同じことを説明してると思うけど、美咲ちゃんが日本語で、美帆メイファンが中国語、オン君がタガログ語で話していて時間も三十秒ぴったり。あとで聞いたら、自然を紹介するテレビ番組のナレーションをイメージしたんだって。さすが、美咲ちゃん。


 動画撮影は初めてで大変だったけれど楽しかったし、これでアップして、たくさんの人が見てくれたら……YouTuberの人たちが増えるのも分かる気がした。

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