第223話「役者は揃った」
2040年10月某日、木更津。
浅倉くん、君ほどの実力なら既に気づいてる筈だ。
戦場支配がサバイバルゲームのような少人数では、その力を十分に発揮出来ないこと。
そして、教えられたからといって、容易く身に付けられる代物でもないことに。
だが、サーベルタイガーの後継者として、東儀雅が育ててると聞いた今、
君は、それを無視できない。
スカーレットの戦闘履歴を見た上で、私と同じ答え(現状では沖田の方が上)を出すだろうが、
それでも、慎重な君なら間違いなく、沖田くんを新宿に通わせる筈だ。
2040年10月某日、香川。
究道学園の施工も着々と進む中、地元の生徒を集めるべく、タイガーチームが奔走する。
帯牙の計画には、生徒の入学対象者は新一年生(中学)のみとなっており、地元でのノルマが120名と厳しいかに思えたのだが、私立であるにも
一方の推薦組はというと、
だが、帯牙には十分な勝算があった。
それは、この時代になっても顧問や先輩からのパワハラは残っており、必ず、夏休みの厳しい練習や理不尽な扱いで、脱落者が出ると予測していたからだ。
そして、究道学園には、優秀な顧問が居て、パワハラする先輩が居ない、例え中学1年生のみでも、全国なら30人は集まると踏んでいた。
こうして、地元138名と推薦組44名、計182名が一期生として入学することとなる。
2041年3月某日、高円寺。
目の前で怒り狂う親友は、自分の思った通りの答えを導き出していた。
その実力を認めていただけに、流石だと思う一方、申し訳ない気持ちもあった。
それは、計画の全容を伝えていないからだ。
本当のこと知ったら、
テッチャン、怒るだろうなぁ。
2041年6月某日、奈良。
奈良の閃堂家へ訪れる5日前、帯牙は
その5日後、奈良を訪れた帯牙は、閃堂家には向かわず、駅前の喫茶店へ入ると、直継へ電話し、自分が居る喫茶店まで
遅めの朝食を喫茶店で終えた時、紙袋を持った早苗が現れ、帯牙は「
早速、携帯電話を受け取った帯牙は、それをデイバッグに入れると、
「家に置いて来た携帯電話の一つは、義姉さん用で、もう一つは
「帯牙さんの番号は?」
「万が一を考えて、止めておきます。もし、連絡する時は、学校経由で義姉さんに連絡します」
「学校?」
「あ、先に言うつもりだったのに……実は、真凰の為に学校を香川に作りました」
「え!? 学校作ったの!」
「はい。9月入学なので、8月末日までに義姉さんも一緒に香川へ行って下さい」
「アタシも?」
「はい、すみません。義姉さんが居た方が巧く行くと思うんです」
「居るだけで?」
「はい、たぶん、気を使われる瞬間が来ると思います」
「あの子が? アタシに?」
「はい」
帯牙の言ってることがイマイチ理解出来なかったが、突然、何か思いついたようで、
「じゃ、アタシもお手伝いしたいんだけど、なにか出来ない?」
「あぁ~、二人で住む部屋を用意してたんですが……解りました。では、真凰は寮に入ってもらって、義姉さんは、そこの寮母さんってのは、どうでしょう?」
「寮母さんかぁ~、なんだか楽しそうね」
「では、お願いしますね」
――同日、天王寺。
帯牙は、公衆電話へと向かい、使い慣れたスマートフォンを取り出すと、その中にあるアドレス帳を開いた。
しかし、帯牙はそのまま通話ボタンを押すことなく、公衆電話にその番号を打ち込む。
2つほどコール音が鳴った後、相手が出た。
「Hallo?(もしもし?)」
だが、帯牙はそれに対して返事をすること無く、受話器をコツコツと叩き始める。
それに対して、相手の男は「Ist die Funkwelle schlecht?(電波が悪いのか?)」と呟き、何度も何度も「Hallo?」と繰り返すのだが、一向に話し始めない相手(帯牙)に
「Scherzanruf!(悪戯電話かよ!)」
そう怒鳴って、電話を切った。
切れたことを確認した帯牙は、受話器を電話機に戻すと暫くもしない内に、その公衆電話のベルが鳴る。
再び、受話器を取ると、今度は一転、帯牙は普通に話し始める。
「久しぶりだね」
「ようやく、目覚めたようだなタイガー」
「早速、近況を聞きたいんだが?」
「すまん、今は駄目だ。アンタが電話したことで、おそらく所在地がバレた」
「だろうね」
「だろうねってことは……アンタと俺の推測は同じってことだな」
「みたいだね」
「三日後に掛け直す」
「なら、次の番号に掛けて欲しい」と、直継に契約させた3台目番号を相手に告げ、通話は終了した。
――同日、神戸。
面倒臭そうな顔を浮かべながらも、三番弟子の
――同日、品川。
駅前にある牛丼屋で遅めの夕飯を終わらせた帯牙は、そこへ現れた鈴木米子に4台目の携帯電話を手渡す。
「今後、これで連絡を取ることにします。決して、他では使用しないでください」
「これも説明してもらえないの?」
「すみません」
2041年7月某日、釧路。
「役者は揃った、これでようやくロールプレイが出来る」
刀真、すまない。
俺は、もう一度ゲームをするよ。
約束する、今度こそ失敗はしない。
だから、お前の娘を餌にすることを許して欲しい。
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