第24話 19万持ってない
【1円~売り切り】OPP AIアンドロイドの女性型骨格【新品】
OPP AIの女性型骨格の新品、未組み立てキットです。
身長150センチから160センチまで対応。
素材:カーボンファイバー・アルミ・チタン
設計:アメリカ
製造:台湾
付属品:マニュアル(USBメモリ)。
組み立て用の治具
ステッカー
以前、クラウドファンディングにて入手したものの、時間がなくて組み立てられず、放置してあった物です。
OPP AIに興味があって手に入れたのですが、忙しくて今後も組み立てる時間がとれそうもないので、生かしてくださる方にお譲りしたいと思います。
パッケージは開封しましたが、部品点数を確認しただけで、組み立てていません。
全くの新品ですが、輸送中についたのか、カーボンの部品に少しすれがあります。
OPP AIの規格に準拠しながらも、設計者ジュリアン・クー氏独自の技術が盛り込まれていて、運動性能はいいです。
骨格的にはパルクールなどもこなせる実力があるので、アンドロイドに運動性能を求める方に最適です。
元箱は捨ててしまったので、別の段ボール箱に入れて発送します。
緩衝材などを入れて丁寧な発送を心がけます。
宅配便、着払いでの発送を予定しています。
基本、NCNRでお願いします。
※骨格だけですので、これだけではアンドロイドは完成しません。
組み立てに関して当方ではサポート出来ません。
分かる方のみ、入札お願いします。
※イタズラ入札防止のために新規の方の入札は受け付けません。
新規の方が入札されても削除します。
どうしても入札したい方は、質問欄から連絡お願いします。
「どう、これ?」
綾駒さんが訊いた。
僕達は、部室の居間で、ちゃぶ台の上に置いたノートパソコンの前に集まっている。
その画面を、部員全員と、うらら子先生が覗き込んでいた。
僕の隣には朝比奈さんと綾駒さんがいて、千木良を抱っこしてるし、後ろから柏原さんとうらら子先生が小さな画面を見るために顔を寄せてるから、女子達の濃厚な香りで酔いそうになる。
「昨日、オークションサイトで見付けたの。これ、使えるんじゃないかと思って」
放課後部室に行くと、綾駒さんが一番で報告してくれた。
ノートパソコンの画面には、カーボンとアルミの無骨なパーツの写真が表示されている。
人の形に並べられた骨のパーツは、200個以上あった。
骨盤の部品はチタンみたいで、鈍く輝いている。
アルミ合金の頭蓋骨は、
「柏原さん、どうかな?」
僕は「彼女」の機械部分を担当する柏原さんに訊く。
「うん、良さそうだな」
柏原さんは、オークションサイトに載っている写真を何度も確認した。
ネットで検索をかけて、型番からどんな製品なのか調べている。
「これくらいの部品をオーダーしたら、普通、100万は行くぞ。クラウドファンディングで出たときも、50万はしたみたいだからな」
柏原さん、機械のことになったら、
「どれくらいで落札されると思う?」
今の価格は、二件の入札で15000円だ。
「他に出てる同じような骨格の値段からすると、20万は行くかもな。10万円台で買えたらラッキーだが」
パルクールが出来るような骨格が20万円で手に入るんだったら、絶対に手に入れたい。
パルクールが出来れば、ダンスだって自由に踊れるだろう。
僕達が作る「彼女」は、完璧な彼女にしたかった。
スポーツだってなんだって出来るようにしたい。
費用から激しい運動は無理かと思ってたけど、これなら可能性が見えてきた。
オークションの締切時間を見ると、約一週間後だ(正確に言うと、6日と半日)。
一週間で、20万か……
「いいわよ。これくらい私がお小遣いで買ってあげるから。100万で入札して、値段が上がるのを余裕で見てましょうよ。もし100万超えても、足すだけだし」
千木良が言った。
「千木良って、毎月小遣いいくらもらってるんだ?」
柏原さんが訊くと、千木良が柏原さんの耳に手を当てて、こっそり
その額を聞いた柏原さんが、能面の
相当もらってるらしい。
「駄目だよ。千木良に出してもらうなんて」
僕は言った。
「いいじゃない。私がいいって言ってるんだから。お小遣い足りなくなったら、パパに言えばもらえるから、私、別に困らないし」
膝の上の千木良は、涼しい顔をしている。
「『彼女』っていうのは、幼女のお小遣いで手に入れるものじゃない。自分達の力で、勝ち取るものなんだ!」
僕は力強く言ってやった。
「名言風に言ってるけど、一ミリも心に響かないわ」
綾駒さんが平板な声で言った。
「僕の心はいま、ウユニ塩湖のように
柏原さんが言う。
「うふふふふ」
朝比奈さんは、ただニコニコしていた。
「もう、めんどくさいわねぇ」
千木良がほっぺたを膨らませる。
「それまでに20万稼いで、オークションに
うらら子先生が言った。
「あと一週間で、どうやって19万も稼ぐんだ?」
柏原さんが腕組みして天井を仰いだ。
そんな方法、簡単に思い付くはずもないから、僕達はとりあえず、朝比奈さんが作ってきてくれたスイーツでお茶にした。
今日のスイーツは、キウイのヨーグルトケーキだ。
キウイとヨーグルトの酸味がさっぱりして美味しい。
ぷちぷちと、キウイの種を潰す感覚も心地よかった。
「とりあえず、生放送やってみようよ。『ミナモトアイ』のチャンネル登録者が1000人を越えて『スーパーチャージ』機能が使えるようになったから、投げ銭してもらえるかもしれない」
綾駒さんが言う。
この前1000人を越えたチャンネル登録者は、今現在2500人まで増えていた。
その中には物好きな人がいて、投げ銭をくれる人がいるかもしれない。
「でも、投げ銭くれた人がいたとして、お金が入ってくるのは一ヶ月後でしょ?」
朝比奈さんが訊いた。
「その分は先生が立て替えてもいいわ。入って来るって決まってるなら、千木良さんのお小遣いと違って問題ないでしょ?」
うらら子先生が僕に訊く。
確かに、千木良のお小遣いをもらうのとは違うから、セーフだ。
スーパーチャージ機能を試すためにも、生放送は試す価値がある。
「よし、たくさん投げ銭してもらうために、『ミナモトアイ』が水着で生放送しよう!」
柏原さんが言って、
「駄目です!」
「駄目です!」
僕と朝比奈さんが、同時に否定した。
言葉もタイミングもぴったり合ってしまったから、なんか恥ずかしい。
「なんだ西脇、朝比奈さんの水着、見たくないのか?」
柏原さんが訊く。
「それは見たいけど、すごく見たい!」
「見たいんだ」
朝比奈さんが、僕をジト目で見た。
「ううん、それはえっと……見たいのは、男子として当たり前っていうか……」
僕はしどろもどろになる。
「水着になるのもいいけど、それは、時期的にもっと夏になってからにしよ」
朝比奈さんが少し頬を赤らめて言った。
この瞬間、僕が夏まで生きる理由が出来た。
「ともかく、生放送やってみましょう」
うらら子が言って、僕達はさっそく準備にかかる。
「私、生放送でアドリブとか出来るかな?」
朝比奈さんは、困った顔もすごく可愛いかった。
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