ゲームは楽しまないと!


 時間は若干巻き戻して――4月25日、ミカサと西雲春南(にしぐも・はるな)のバトルは――予想外とも言える決着を迎えた。

勝ったのは――西雲である。ミカサがARパルクールに慣れていなかったのも原因だろうか?

このバトルはミカサが持ち込んだ訳ではなく、西雲が決着を付ける為に挑戦状をたたきつけた物である。

【ランダムフィールドが復活しないと、ミカサも――】

【まさか、こう言う展開になるとは】

【ARパルクールでも別機種だと結果は――と言う事かもしれない】

【別機種と言っても、ルールは同じだろう。何が違うと言うのか】

【ARガジェットも仕様は同じに見えるが――細かい違いがあるのかもしれない】

【リズムゲームAとリズムゲームBが似たような画面構成でも、プレイしてみると違う個所が出てくる。ソレと同じだ】

【つまり、ミカサはランダムフィールドの間隔でプレイして負けた、と】

 SNS上では、完敗とも言うべきミカサの方が炎上していた。

しかし、炎上と言っても何時ものパターンなのでミカサは何も言及しないのだが。

「結局、こう言う流れになっていく物なのか。サービス終了すれば、忘れられてしまう――」

 既に別のARゲームをプレイしているウルズは、ミカサの敗北に関して少し含みがあるような言い方をしていた。

ミカサに関して叩くユーザーの心理として――大抵が安易な理由で叩いていると言ってもいいだろう。

あるいは、まとめサイト等でアフィリエイト収益を得ようと言う存在がいるとか――。

「過去の栄光にすがっているような勢力は――こう言う物だ。民度が低いと言われるのも納得だろうな」

 ウルズのプレイしている様子を観戦していたのはスクルドである。

彼女もランダムフィールドに関する決着はあったと思っているが、これで全てが決着した訳ではないと――。

「SNSテロやネット炎上は、ガイドラインを決めて規制をしていく流れになるだろう。過剰干渉はするべきではない」

 同じくヴェルダンディもスクルドに若干の同意はしつつも、過剰干渉する事は現状で危険と考えていた。

好きな物からは批判された事に対して感情的になるのは――若干理解できる感情だろう。しかし、それが過激になり過ぎてデスゲームやSNSテロを起こしては本末転倒である。

それを踏まえ、ノルン3人衆は――オケアノスの一件からは手を引く事にした。

「ここから先を考えるのは、プレイヤー自身だ。議論を進める為にも――」

 ヴェルダンディが見つめる先のセンターモニターには、勝利した西雲の姿が映し出されていた。

全ては――オケアノスに関わっていくプレイヤーが決める物だろう、と。



 4月29日、この日は祝日となっている。ARゲームエリアであるオケアノスにも観光客が姿を見せていた。

彼らの楽しみと言えば、ARゲームであるのは間違いない。様々なジャンルが存在し、それぞれに固定ファンが付いていたからである。

草加駅近辺でARバトルロイヤルやストリートファイトが展開されているが、ギャラリーの全員がそれを目当てをしている訳ではない。

【草加駅だけで、この人混みは何とかならないのか?】

 あるつぶやきが画像付きで拡散していたが、その写真には新宿や渋谷辺りのサラリーマン通勤を思わせる人の数が――。

これは一種の合成画像や雑コラの部類ではない。間違いなく、本物だった。

【これが埼玉なのか?】

【信じられない。一体、何が起こっている?】

【エイプリルフールには早いのでは?】

 その後もSNS上では様々なやり取りはあったが――相変わらずまとめサイト等も存在し、ネットを炎上させようと暗躍をしている。

結局、ミカサの言っていた事は理想に過ぎなかったのか?



 5月1日、いよいよゴールデンウィークだが、ARゲームにはゴールデンウィークも関係なく観光客が足を運ぶ。

その理由は――様々あるだろうが、ゲーム系コンテンツと言う事で大体の理由は分かるかもしれない。

「やっぱり、ここに戻って来たか――」

 谷塚駅近くのアンテナショップで、ある人物を待っていたのはビスマルクだった。

何故、彼女がここに来たのか? それはパルクールのイベントが谷塚駅より1キロ位離れた場所で行われるからである。

「まぁ――ビスマルクの言う事も一理あるけど」

 その人物の正体は西雲だったのである。彼女もパルクールのイベントで谷塚駅に来たらしい。

「やっぱり、たまにはゲームがしたいでしょ」

 彼女は笑顔でビスマルクに応えた。ここまでくると――ある種のゲーム馬鹿と言うべきか。

ビスマルクは呆れたような表情で反応はしていないので、彼女の言う事に理解をしているのだろう。

お互いにARゲームとしてのパルクールとリアルのパルクールを見てきた。だからこそ、お互いに主張したかった事も――理解出来たのかもしれない。



 この後も、様々なバトルがARゲームで行われ――それぞれが盛り上がっていた。

稀に加熱しすぎて周囲に迷惑をかけてしまうケースもあったが、それを炎上させようと言う勢力は――現状では一掃されたと言ってもいい。

ARゲームは純粋な心で楽しむべきだろう――というプレイヤーたちの団結が、炎上勢力の根絶に貢献したという事だろう。

「ここまでは――予期せぬアクシデントはあったが、計算通りだろう」

「しかし、一連の計画は失敗だった。SNSテロに関して具体的な事例を出せず、訓練も事実上の失敗だった」

「我々は――次のプランを急がなくてはいけない。ネット炎上というコンテンツ流通に不要な存在を消す為にも」

「単純に消すだけでは飽き足らない。ネット炎上をした人間は――」

「ストップ! その考え方はネット過激派と全く変わらない。オケアノスのプレイヤーは、それを望まないだろう」

 周囲の会議室に集まったスタッフに対し、加熱し過ぎたと判断したのはミカサだった。

ミサカとしてのARアーマーは装着していないので、この場合は三笠(みかさ)と言うべきなのか?

「オケアノスのプレイヤーは純粋にゲームを楽しみたいと望むはず――」

 そして、三笠はある提案をスタッフに打ち明ける。それは新しいキッズ系ゲームのプランだった。

「何故、このタイミングでキッズを対象にする?」

「その手のゲームならば、玩具メーカーからいくつか出ているはずだ。それをARゲームでやるのか?」

「確かに、企画書の仕様であればARゲームでも可能だ。しかし、キッズ系ゲームで大丈夫なのか」

「テレビアニメ的にはキッズ系であれば、視聴者的にも――」

「そう言うメタ発言はいらない」

 ある人物の発言に対し、三笠はツッコミを入れる。

そして、彼女は――こう切り返した。

「ゲームは楽しまないと! 誰でも楽しめるような――それこそ、ゲームに国境はいらない! そう思わせるゲームを作るのよ!」

 三笠はクリエイター側として、ARゲームを作る事を決意していた。

プレイする側に立ってこそ、初めて分かった事もあった。今回のランダムフィールドを巡る事件でゲーム依存症やSNSテロ、それ以外の部分でゲームの闇も知ったのである。

そうした事を含めて、プレイヤーに学習させる事が――コンテンツ流通的な部分でもゲーム文化を発展させるのに必要と感じていた。

「イースポーツ化を含めて、様々な問題も浮上しているけど――それらをひとつ、ひとつ――解決出来れば、理想のゲームが出来るかもしれない」

 彼女の熱意に負けるかのように、新たなキッズ向けARゲームの開発が進められた。

しかし、そのゲームは既に別所でパッケージ化がされており――稼働も秒読み状態だったのは、言うまでもない。

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パルクール・ランナーズ 桜崎あかり @akari-novel

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