ミリオンプレイヤー


 午前12時、ある程度のプレイを終えたフレスヴェルクは小休止をしていた。

昼食を食べるにしても、運動の後なので――色々と反動が怖い。そう言った事を周囲の様子を見て判断する。

【今日は色々と動画がアップされているが、アップして瞬間的にミリオンと言う動画がない】

【そこまでのARゲーマーはいないだろう? ジャンルによっては違うかもしれないが、ランダムフィールドだとミカサしかいない】

【しかし、実況者とか歌い手ではない動画がミリオンを取るのは――色々と情勢が変わっている可能性も高いだろう】

【草加市だけが特別なのかもしれない。拡張ゲームがメインとなっているオケアノスの周囲では】

【そう言う物か?】

【そう言う物だ。現実とは――】

 掲示板のスレ等では、ミリオン再生を出すようなプレイヤーは少ない事が言及されている。

そして、その一人としてミカサの名前が出ていたが――。

「ミリオン再生を達成しても、それがマッチポンプであれば意味はないだろう」

 フレスヴェルクは確信している。ミカサの目的は一種の承認欲求を得る為に動画をアップしている――と。

確かにつぶやきサイト等では、ミカサを英雄として祭り上げるようなまとめサイトも存在する事は事実だ。

しかし、その一部だけを見て全体を見極めるのは難しい事も事実である。

「真犯人は、おそらく――」

 フレスヴェルクはミカサを祭り上げている真犯人に関して、おおよその特定が出来た。

自分でも目的外の事とはいえ、これに関しては想定外と言えるだろう。



 同刻、自宅で動画を見ていた西雲春南(にしぐも・はるな)は――フレスヴェルク以外の物もチェックし始めている。

コスプレイヤーの走る物、元アスリートの挑戦、ドキュメント番組風、MAD動画や実況と言う物もタグで調べていた。

「どれも、レベル30近辺ばかり――ミカサは、それより上だと言うのに」

 テーブルに置かれていたのは、コーラのペットボトル――それにコンビニで買ってきたと思わせるような唐揚げ弁当である。

動画を視聴していたのはパソコンではなく、液晶テレビだ。お昼時なので自室ではなくて、1階まで下りて――居間に姿を見せている。

「本当に――」

 自分はミカサのようなスーパープレイを参考にしたいのだが、なかなか発見できていないのが現実だった。

その為か、若干の焦りが見える。ペットボトルのコーラを半分ほど一気飲みし、それで気分を落ち着かせようと試していた。

(どうすれば――あのビスマルクに勝てるのか?)

 プロのパルクールプレイヤーでもあるビスマルク、彼女を越える為には――どうしても技術を上げる事が重要だった。

いわゆるチートや不正行為でパワーアップしたとしても、失格処分を受けるのは目に見えている為である。

短期間でパワーアップと言う漫画やアニメの様なご都合主義は――ARゲームで通じない。

だからこそ、パワーアップは無理でも自分で出来る範囲のスキル向上は可能だろう――と判断したのだ。



 午前12時30分、ビスマルクが姿を見せたのは――近所のコンビニである。

お昼を買いに来た訳ではなく、単純に別の用事である。コンビニの入り口よりも少し奥にあるATMにも似たような端末――。

「確か、これで――」

 特にお金を入れなくても端末を利用する事は可能だが、ダウンロード型アイテムを購入する場合等はお金が必要だ。

アイテムを購入する場合は、端末に表示されたQRコードをARガジェットで読み込み、それをコンビニのレジで提示すればアイテムがダウンロードできる。

 しかし、ビスマルクは特に課金型アイテムを買いに来た訳ではない。彼女がチェックしてたのは――ARゲーマーのプレイログだった。

ログに関しては個人情報と受け取られがちな物だが、プレイヤーの住所や本名等の情報は非表示なので、その辺りの問題はないだろう。

動画タイプの場合は――他のアンテナショップでないと閲覧不能だ。さすがにコンビニで長時間居座るのは――店員視線からしても気持ちの良いものではない。

「なるほど――ここで正解だった訳か」

 ビスマルクがチェックしていたログ、そこにはミカサの名前が載っていた。パルクールレベルが100オーバーなので、間違いはない。

最大レベルは150と言われているが――短期間で100を超えるレベルなのはミカサしか存在しないだろう。

それでもレベル100を超えるプレイヤーが数人いるのは、ネット上でも不正疑惑を疑うレベルだ。

「プレイヤーのネームは――?」

 ここで、あるレベル100プレイヤーのデータを確認しようとしたビスマルクは――手が滑って別のプレイヤーのデータに触れてしまった。

そこに表示されていたレベルは、何と50である。ミカサほどではないが――勝率も比較的に高いだろう。

「フレスヴェルク――まさか、ね」

 ある特撮番組の作品名がビスマルクの脳内に――浮かんだ。

しかし、名前としてはごくありふれている可能性もあるので――別人と言う可能性は否定できないだろう。


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