1-SP6 スヴェトラーナの仕事3
地下とは思えない地下室でボグダンさんと会って、ゴーレムの話を聞きました。
今でも信じられませんが、お伽噺に出てくるゴーレムなんて作り出せちゃうボグダンさんなんだから、何でもありなんだと思います。
あ、でも、やっぱり外なのかも知れません。
……きっとわたしには、一生分からないことなんだと思います。
分からないことは置いておいて、それよりもゴーレムさん達です。
さすがボグダンさんが作り出しただけあってで、無骨な岩の人形ではなく、まるで人のようでした。
服を着ていないし毛や爪が一切無く、目と口は閉じたままですから、人で無いことは分かります。
でも、幼い男の子でも女の子でもない子供のような雰囲気があって、なんとなく親近感の持てる形状をしていました。
ミレルさんは、ボグダンさんがこういうのをスキだと思っているみたいです。
ボグダンさんは、落ち着いて理由を説明していましたが、言えないことがあるのか、2人は視線で会話を始めてしまいました。
羨ましくないですよ?
このお二人ですから、そういうものなのです。
でも、分かり合えることは良いことだなって思います。
そんなことを思っていると、急にミレルさんの視線がこちらに向きました。
わたしは視線では会話できないですよ?
慌てて、何となく疑問に思っていたことを口にしました。
「そ、それより、
この質問にも、ボグダンさんは冷静に答えてくれました。
食べ物を作らせているのだとか。
わたしは全く理由が分かりませんでしたけど、ミレルさんは分かったみたいです。
ミレルさんの答えに、ボグダンさんも嬉しそうに頷いています。
そしてミレルさんも、ボグダンさんの考えと合っていたことが嬉しいみたいです。
う、羨ましいわけじゃないんですよ?
わたしには、村の将来なんて考えが及ばないですし。
でも、半分はボグダンさんの趣味みたいです。
これはわたしでも考えることが出来ます。
中性的な子供に見えるゴーレムさん達に、野菜を作らせている。
これがボグダンさんの趣味です。
意外です!
中性に興味があったなんて!
あ、いえ、人の趣味をとやかく言うつもりはありませんし、これはあくまでもわたしの想像です。
他に、ボグダンさんの趣味と言える要素があるのかも知れません。
そうなると……子供を働かせる趣味ですね!
なんということでしょう。
わたしでは役不足の理由です。
肉付きこそ子供っぽいですけど、身長はゴーレムさん達より上です。
わたしももう14歳、子供も産めますし大人ということです。
いえいえ、そうではないかも知れません。
これも想像です。
他は他は……ゴーレムさん達には感情がありません!
眠ることもなく黙々と仕事を熟すと言います。
ボグダンさんは、黙々と作業をしている様を眺めるのが趣味なんですね!
アリの行列を眺めるタイプなんですね。
あ、これは、当たっているかもしれません。
今想像したことを全て合わせてみれば、何か違った物が見えてくるかも知れません。
つまり、中性的な容姿で感情のない子を黙々と働かせる、のが趣味だと言うことですか?
奴隷商人もビックリの趣味で、そんな人がいたらお得意様ですね!
ボグダンさんに限ってあり得ないです。
いえ、そのためのゴーレムの可能性も捨てきれなくなってきました……
天使なボグダンさんが、そんな趣味は持っていないと思いたいです!
これは、ここで働いて確かめるしかないです。
嬉しくないですけど、わたしは彼女たちの体型によく似ています。
中性的ではないとは思いますけど……髪の毛を剃ればいけるかも知れません。
寝ずに働くかと言われたら、彼女たちには負けるでしょう……でも、頑張ります!
わたしは熱意を見せることにしました。
そして、その結果、ここで働かせてもらえることになったのですが……
なんということでしょう!
あんなに大変な畑仕事が、ここでは見違えるように簡単だったのです!!
その簡単な作業が新しくて楽しくて美味しくて、わたしは気付かないうちに……ボグダンさんの手を煩わせることになってしまったのです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ボーグが地下の施設の案内を始めてくれて、わたしとスヴェトラーナは色んなの見せてもらったの。
これがやっぱり、驚かずにはいられない物ばかりだったのよ。
野菜を作っているから畑があるのかと思ったのだけど、ボーグは建物の中に連れて行くのよ。
地下室の中の建物って変な感じだけど……
強い風を全身に浴びながら建物の中に入ると、部屋の中が外より更に明るかるいのよ。真昼みたいに!
そしてそこには、半分ぐらい水が満たされた透明な箱が沢山並んでいて、水の中から草が生えていたわ。
ボーグの話では、これが新しい畑なんですって!
少しずつ成長具合の違う草は、どこかで見たことがあると思ったら、キャベツだったの。
土の上にないだけで雰囲気が変わるものなのね。
一番成長している物は、もう収穫時を過ぎたような物もあって、なんだか勿体ない気がしたけど……ボーグは経過観察中だから必要だって。
「早く成長する種類だから、どのぐらい保つのか色々試しているんだ。ミレルが今見ているちょうど食べ頃なのは、発芽から15日程度なんだよ」
15日ですって!
え、だって、キャベツよ?
1年に1回しか収穫しないのよ??
15日で収穫出来るなんて……1年に何回収穫できるの!?
しかも天候に左右されずに、土がないから虫もほとんど付かないらしいの。
雑草も抜かなくて良いし、水も肥料も魔石から供給してるから、育てるのに何もしなくて良いんですって。
種植えと収穫だけはしないといけないから、
改めて魔法のスゴさを思い知らされるわね。
備蓄って言ってたから、てっきり収穫したのを保管しておくのだと思ったのだけど。
地下だから日も当たらず、涼しいから保管に適してるからね。
でも、まさか……こんなことになってるとは。
……すぐ育つなら備蓄はいらないんじゃないかしら……?
「15日間は待たないといけないんだから、村人全員の15日分は必要だろう? それに、ここで作る食料で、毎日の食料を賄えっていけるかも分からないから」
ボーグはそう言うけど……
この建物、何階建てなのか分からないぐらい高いし、全ての階を合わせると、この村の畑より広いんじゃないかしら……?
上の階だけじゃなくて、ここより地下もまた部屋になってるらしいし。
「毎日収獲できるように発芽時期をずらしてあるから、収穫できるのは作付面積の30分の1ぐらいだよ」
でも、それが毎日なのよね?
1年は350日前後なのよ?
ちょっとわたしには、数字が良く分からなくなってきてるけど……
ボーグを見つめることしばし。
ボーグは首を傾げたかと思うと、天井を見上げたの。
「あ、これは……村の畑の10倍ぐらい作れちゃってるんだね……」
くすっと、つい笑いを漏らしてしまったわ。
ボーグもわたしにつられて笑うの。
何でも出来てカッコいい旦那様だけど、そういう抜けてるところがズルいわ。
神様の使い様なのに、可愛いって思っちゃう。
また、スキになっちゃうわ。
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