For sometime……

 

 ―― ねぇねぇ。リリーたん、リリーたん? ――


 ―― やめてっていってるでしょ、そのアホみたいな呼び方 ――


 ―― 可愛いリリーたんにはピッタリのぷりちーなあだ名だと思うんだよ ――


 ―― ぷりちーって……二周くらい回って古いんだけど ――


 ―― ありがとうなんだよ、リリーたん ――


 ―― なに、急に?気持ち悪い…… ――


 ―― うん、ありがとう。わたしのお願い聞いてくれて ――

 

 ―― 別に……あんたのためじゃない。あれ、持て余してただけだし…… ――


 ―― むっふっふぅ。リリーたん、か~わ~い~い~ ――


 ―― ……殺す…… ――


 ―― そんな可愛いリリーたんにもう一つお願いがあるんだよ ――


 ―― ……あんたの図々しさってマジでどこからくるわけ? ――


 ―― いつかね。いつか……本当にいつなのかはわからない。明日なのか明後日なのか、一年後なのか十年後なのか千年とか二千年とか経った後くらいなのかはわからない。……だけどね。だけどいつか、イッくんが……わたしの弟がここにくるようなことになったら。そしてもしも困っているようだったら。リリーたんが助けてあげてほしいんだよ ――


 ―― 二千年って……アタシにそれまで生きていろと? ――


 ―― うん。できるでしょ? ――


 ―― 簡単に言わないでくれる?幾らアタシでも、さすがに出来ないことだってあるんだからね ――


 ―― ダイジョブ、ダイジョブ。リリーたんならできるってぇ~ ――


 ―― はぁ……そもそもなんでアタシがあんたの弟を助けるために二千年も生きなくちゃならないのよ?そういう慈善心アタシに期待されても困るんだけど ――


 ―― だって、リリーたん優しいし ――


 ―― ………… ――


 ―― それにわたしたち、親友でしょ?さすがに大事な弟のこと、他の人には頼めないんだよ ――


 ―― あんたは……よくもまぁ恥ずかしげもなく…… ――


 ―― 約束だよ、リリーたん。はい、指切り ――

 

 ―― はいはい、気が向いたらね ――


 ―― ちょっとぉ~指切りはぁ~? ――


 ―― 指切りなんかより、アタシがあんたの弟に会う日まで長生きできること祈っておいて ――


 ―― 長生きかぁ~リリーたんってこんなに綺麗だけど、どんなお婆ちゃんになるのかなぁ ――


 ―― ふん、それはそれは綺麗なババァなんじゃないの ――


 ―― 今はそんなツンデレギャル風味の口調だけど、さすがにお婆ちゃんになっても『アタシ』とか『マジ』とか言ってるのはちょっとイタイと思うんだよ ――


 ―― マジで殺すこの女…… ――


 ―― やっぱもうちょっと威厳をもって『我』とかにしてみたらカッコイイんだよ。語尾には大体『じゃ』とかつけて ――


 ―― なにそれ、クソダサいんだけど ――


 ―― ああ、そうだそうだ。約束ついでにもう一つ ――


 ―― 揺るぎねぇな、コイツ…… ――


 ―― もしもイッくんがこっちに来た時、そばに女の子がいたらわたしの代わりにちゃんと品定めしてほしいんだよ ――


―― なに、あんたの弟、女連れで異世界にくるほどチャラついてんの? ――


―― ううん、イッくんのことだから、女の子の方がベタ惚れで勝手についてきたりする可能性があるんだよ。何せ超絶カッコイイんだもん、イッくん。こっちの子に見初められて無理矢理に連れてこられるなんてパターンもあるかもしれないくらいに ――


―― へぇ~そんなにイイ男なら、アタシが喰っちゃおうかな。いいでしょ、お義姉さま? ―― 


―― ………… ――


―― こわいこわい!!え?マジ!?このアタシが、睨まれただけでマジビビリしてる!? ――


―― ………… ――


―― わかった!わかったから!全部、アタシにまかしとけ!あんたの弟のことも助けるし、横に女がいたらちゃんと弟に相応しいかどうか見てやるから!だからしまえ、しまえ!その研ぎ澄まされた殺気をしまえ!! ――


―― うん、やっぱりリリーたんは優しいんだよ ――


―― そんな優しいやつを本気で殺しにかかるなよな…… ――

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