そいつ

わたしはそいつに無視される

だからわたしもそいつを無視し返す

いつだってそいつはわたしを無視する

無視し続ける

まるでわたしが存在していないようなふりをする

その理由がよくわからない

だが世界の外側はいつだって理解不能に満ちている

きっと自分には想像の尽かない深い理由があるのだろう

そいつはいつもわたしの視界から隠れている

ほんの少しだけその正体を窺わせている

匂いがほのかに残っている

「………そこにいるんだろ?」

わたしのことを終始、観察している

わたしはそいつの役目を想像しおかしくなる

そちらへ視線を移すと慌てて隠れる

もうばれているのに

諦めてさ

姿を現せよ

そいつは自分のことを運命と名乗っている

わたしは明日の朝に自分の隣りで微笑んでいるかもしれないと思う

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