さっき

さっき天使を見たよ

嘘ではないよ

本当にいたんだよ

天使は絶滅したって言われていたけど

ぼくは見たよ

あれは多分、天使だよ

遠くの方から眺めていたよ

本物を見たのは初めてだったよ

髪は長くて

白い服を着ていて

そして空から落下していた

多分、今頃、地上に激突して死んでいるとは思うけど

まだあの瞬間は生きていたよ

天使だよ

優しい微笑みを浮かべていたよ

きっと酸素、以外の何かを吸っていたんだよ

その気体はこの星にもう殆ど残されていないよ

一人残らず消えて行く運命だったのかも

そしていつか図鑑に載ることになるよ

こんな生き物がかつていましたと

解説が付け加えられるよ

信じられなくても事実だよ

天使を見たよ

それは最後の一人だったのかもしれないよ

おそらくもう二度と現れることはないよ

この世界は行き止まりだよ

皆、何処へ向かえば良いのかわからず立ち尽くしているよ

視界に入らないふりしていた根源に

直面する時だよ

でも、何も無かったらどうしよう?

あまりにも暇を持て余して

ろくでもないことを繰り返した

天使は消えたよ

そしてそれはある前兆でしかなかった

きっとこれからもっと良くない出来事が起こる

ぼくらは空っぽの冷蔵庫に指先を伸ばした

その先に何かがあると思いながら

まだ開いていないのだ

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