新しい日々

追い詰められ

それは錯覚だと教えられ

それでもその錯覚を正確に感じとって

自滅しようとしていた

優しげに話しかけるあなたに

この景色を見せてあげたかった

人生で

最も輝かしいと言われる季節をわたしはそのようにして過ごした

残念だね

けれど時間は戻らない

頭の中を巣食っていた

あの正体は今となってもよくわからないが

それはほんの僅かのずれだった

それだけは確かだ

だがそれは

異端者の烙印を押されるには十分すぎた

言葉を覚えた宇宙人が侵略しに来たような感覚を周囲に与えた

(とても良く似ているだが何かがおかしい)

わたしはある日、隠されていた注射針を見つけ出した

幻は消え去った

本当の事は誰も教えてくれない

洗脳だけがこの世界を支配している

ただただ愚かな椅子取り遊びに巻き込まれ

人生は消費される

動脈を駆け巡った成分に

わたしはこれまでとは全然、異なった手ごたえを感じた

そしてわたしはようやくわたしになった

何もかもが遅すぎた

今ならわかる

この世界に愛や夢の歌が満ち溢れ

世界が永遠に花咲く季節になれれば良いという人々の願いが

かつて破滅を願ったわたしが

ぽつんと立ち尽くすのみだった

もう見えない影に怯えることもない

そして訪れた日々は

何だかとても退屈で、無価値なように思えるのだ

足りないものが恋しいのだ

きっと永遠に幸せにはなれないのだろう

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