閑話②:リアンさんの行く先には、――さんがついてくる。
メルクト大教会爆発事件の、夜の事。
「あの男、なかなか頭がいいね。ボクをバラバラにするなんて」
リアンはこきこきと肩を回す。まだ右手の先が無いが、水色の細かな砂が風に乗って、その断面に集まってきていた。やがて完全に右手が治ると、リアンは立ち上がる。
「さて、ここはどこだろ?」
リアンはあたりを見回す。月は出ているが、木々がうっそうとしてその光をさえぎっており、よくわからない。しかし、どうやらどこかの山のようだ。
「空を飛べば分かるか」
リアンは足元に魔方陣を浮かび上がらせると、飛び上がろうとした。しかし、その刹那、ばしゅんと青白い光が走る。
「…!?」
重力の魔方陣が一瞬に消えた。それはリアンがよく知る魔法、吸収魔法だった。そして、それはリアンのものではない。
『ごきげんよう』
その声にリアンがはっとして振り返ると、闇夜の中ぼうっと青白い光が浮かんでいる。
「誰だ…!」
リアンは身構える。すると、光は青白い光でできた人型となる。一際明るく発光すると、光は収まった。そして、そこに居たのは、銀髪を夜風にたなびかせた…
「…どうして…?!」
リアンは相手の姿に、驚愕に目を見開いた。そんなリアンを、その人物は冷たい目線で見ると、淡々と口を開く。
『お前の気配で目覚めてしまったよ。どうしてくれるんだい?』
そして、その人物はリアンに手を向ける。この相手は分が悪い。咄嗟に逃げようとするリアンを、しかしその人物はすかさず蔓草で拘束する。
『僕はね、安らかなスイミンをじゃまする奴が、一番腹が立つんだよ』
その人物は恐怖に震えるリアンに、そう言いながら歩み寄る。そして、リアンの顎に指を当てると、自分の顔を見させた。
『初めまして僕はジュリアン。キミと同じ名前だね』
その人物は「よろしくね」とにこりと首をかしげると、「死ね」と魔法を放った。
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