寝取られたヒロインユーリや寝取った間男ソルディグが、のうのうと生きているのが鼻に付くのでいまいち本筋に興が乗れません。
恋人ロジオンが失いかけたユーリとの絆を取り戻そうと、命懸けで彼女の為に強くなろうとしている最中に当の彼女は全力で止めるでも無く、応援するでも無くひたすら自分にとって居心地の良いソルディグの元へ夜な夜な通い妻して朝帰りを繰り返す様な堕落っぷり。
この時点でもう戻る気も無く、戻れる筈も無い程裏切りの日々を重ねていても「可愛そうな私(ユーリ)」を気取って、自分から別れを切り出す事も無く流されるまま日々を過ごし、決定的な場面で最悪の言動をします。
この直前までロジオンはほとんどの人が使える「魔導」を持たず、己の身体能力のみで死闘を繰り広げていたのに・・・
(ちょっと間違えば容易く死ねる状況なのに)
まあこの時点で新恋人ソルディグ&自分の夢>>>>超えられない壁>>ロジオンなので、例え元恋人のロジオンが死んだとしても「恋人を失った可哀想な私」として大手を振ってソルディグに後腐れなく擦り寄れるので、むしろ死んでた方が煩わしさや後ろめたさから解放されて無問題だったのでは?
後に「あの時私(ユーリ)はこう思っていた」という場面がありますが、話している内容はとても酷く自己弁護と「やった事に対してほとんど罪の意識の無い」無自覚な残酷さでロジオンを苛みます。
ロジオン側のキャラクターは快楽主義だけど頼りになる冒険者の先達なガエウス、ミステリアスだけど根っこの部分は優しいナシト、最年少なのに時々誰よりも大人な表情を見せるシエス、しっかりしてそうでその実ポンコツ気味なルシャ等々非常に魅力的なのですが、敵?側の蒼の旅団の面々は良く言えば掴み所の無い、悪く言えば無味乾燥な輩が多く所々目立つキャラはウザイだけの魅力に欠ける存在と成り果ててしまっているのが残念です。
現在話の途中でざまあタグが付いてないのは百も承知なのですが、自分達の勝手な理屈で人一人の人生を文字通り歪めておいて、彼らは本懐を遂げる様を見るのだとすると物語に期待する気が失せます。
ぶっちゃけた話「ユーリ夢の手前のどっかの戦いで手足失って絶望しないかな?」と暗い願望を巡らせてしまう程に。(それはそれで自分がこの作品にのめり込んでる証拠で、作者様の力量が素晴らしい物だと思えますが)
確かに現在ロジオンにはお互いに守り愛する事の出来る存在がいますが、それはマイナスがプラマイゼロになっただけで、相手側は全くノーダメージで人生を謳歌してるのがとてつもなく不快です。(最も寝取られとはそういうものかも知れませんが)
これでソルディグがもっと「人間味」のある人物なら、読み手としても感情を込められるのに無機質で、ユーリを寝取った経緯も「弱ってる剣技の巧みな女がいるからいい機会だから手の内に入れよう」とまるで将棋の駒の様に「能力だけ見て人格を省みない」キャラなので、やってる事は非道なのにコンピュータの様で残念です。(もっと人間味があればいい意味でロジオンのライバルになれたものを)
まあユーリもユーリでそういう扱われ方が心地良いようなので、そのまま愉悦に浸ってればいいものをちょくちょく顔出して「悲劇のヒロイン面」してるから個人的は株が下がる一方なのですが、この世界は善良な人や優しい人に厳しい世界らしく今現在ロジオンの冒険は着々と進行中なのに、旅が一つの終着点を迎えた時に居場所が少なくなっていそうな現状なのが気がかりです。
(今現在やりたい放題してる側の方が、良い思いをしてる様にしか見えないので)
折角本筋が今どき珍しい「土の臭い」のしそうな、重厚ファンタジーなのに残念でなりません。
舞台はファンタジーだけど、心理描写がリアルで生々しい。
主人公目線で語られるそれに、いつの間にか感情移入し、これでもかと心抉られること必至です。
安易に読者のカタルシスに走らない展開。
色んな解釈ができる描写に人物像。
よくあるファンタジーとは一線を画す秀作です。
ソルディグ(間男)主演、ユーリ(元彼女)助演「寝取った後のファンタジー」が猛烈に読みたい。
ユーリ主演の「フった後のファンタジー」でも○
ネタとかじゃなく、本作とセットで読んだら絶対面白いと思う。
お金払ってでも読みたい。いやマジで。
完結後でも良いので、主人公以外の目線で書いて頂けるのを心待ちにしています。
彼女を守って
僕が
死ぬ
それが僕の愛だった
なにもない僕 すべては彼女のためにある
よわい僕 大事な彼女にしてあげられるのは、命をかけて守ること
そんな僕と彼女に 凄い男が現れた
とても強くて、ここぞの場面で誰より頼りになる男
僕の彼女は その男の背中を見つめてた
嫉妬した 僕にないものすべてを持ってる男に嫉妬した
彼女が魅せる眩しい笑顔 それが痛くて痛くて堪らない
笑顔を向けてる相手は 僕じゃない
彼女の心は離れていった 僕の心は虚ろになった
彼女は別の男を愛してる、強い男を愛してる、彼女を守るに相応しい
心が理解を拒絶する 心が砕けて砕けて、それでも砕けて
すべてを賭けて彼女の心を取り戻す
弱い僕よ、砕けてしまえ、お前は彼女に相応しくない
彼女を離さないためならば、強さを手にするためならば
苦しさ痛みに、心が体が、反応しない もはや、見えず、聞こえず、感じない
それでも強く、なれてはいない
己の意思が砕けぬ限り 何があろうと前へと進む
体よ砕けよ 心よ砕けよ
弱い僕のあらゆるすべてよ、砕けてしまえ
すべては砕けた 潰えてしまった なのに強さは手に入らない
たとえすべてが砕けても ここには砕けぬ意思がある
この ぼくの意思 がある 負けるものかと震える意思が
ここにある 意思がすべてを超えた時
僕の中の 何か が弾けた
そうして僕は手に入れた、守れる力を手に入れた
だから愛しい人よ、どうか僕を捨てないで
どうか僕を選んでおくれ
この物語はロージャという主人公の視点で物語が進みます。
彼はどういう人物か。一言で言うなら聖人でしょう。
およそ、人とは思えないほど善良な人物。
人の世の奇跡とは、彼のこと。
彼は劣等感の塊でもあります。
それはなぜか?
この世界には魔素があり、魔導があります。
魔導が使えない人物は、無価値、劣等なのです。
ええ、そのとおり。
彼は魔導がまったく使えない、この世における最劣等。
ですが、彼は決して挫けない。
真っ直ぐ真っ直ぐ生きていく、その眩さは太陽さえも比較にならない。
なのに当人にはその自覚なし。
己は無能であると心の底から信じきっている。
その自信の無さは底なしと言えるでしょう。
彼は自分の価値を知らない。
だから、大事なものを守るためならば、簡単に自分の命を投げ出してしまう。
傍にいる人たちが彼をどれほど大事に思っているのか
これっぽちも知りもしないで、、、
彼はとても優しく、恐ろしいまでのお人好し。
人を信じることしか知らない。彼の世界にはまだ敵と言えるものはほんの少し。
彼の言葉は他の人とは違います。彼は助けると言えば必ず助けます。
たとえどんな敵が来ようとも決して言葉を違えることはありません。
その敵が暗殺者であろうと巨人であろうと巨大宗教組織の教皇であろうと。
そんな彼が、最愛の恋人が寝取られて手ひどく振られた後から物語は始まるのでした。
第一の読み方 ロージャの世界
そのまま読み進めればロージャ視点のお話が楽しめます。
この視点では、人、モノ、すべてがロージャフイルタを通して見ることになります。
彼の考え、性質、生まれ、育ち、教育、経験、その他諸々があらゆるものに付与され
ロージャの世界が構築されています。
話は彼の内面を体験していくもの。
白眉というべきは彼の喪失、心が壊れていく様。
劣等感、焦燥、嫉妬に無力感。
狂気に堕ちていく彼の苦しみを味わおう。
想像力と感受性を最大にし、ロージャと同調して苦しみぬく。
これが本作を一番美味しく頂く方法。
苦しければ苦しいほど美味しい。
死ぬほど苦しければ死ぬほど美味しい。
第二の読み方 無限の世界
小説の中で公開されている設定があります。
その設定から演繹的に導き出される、おそらくは、こうであろうという世界の仕組み。
それらが組み合わさると。
心象内で、世界が再構築されます。
世界は情報が蓄積するほどに、鮮やかに精密に
濃密に見えるようになっていきます。
心の中に世界が湧き出てくるというべきでしょうか。
蓄積の足りない部分はぼんやりとしか見えません。
そういう部分は新情報が公開されると、途端にはっきりと見えるようになることがあります。
場合によっては、世界そのものが壊されて、また一から再構築される
そういうことも起こります。
ごくたまに、閃きによって、世界が人物が物語が一瞬で変貌するのを体感することもあるでしょう。
閃きによって世界が新生し、新世界が新体験を生む。
これこそが読書の基本にして究極。
新鮮な驚き、閃きの快感、新世界の体験。
濃密に蓄積されている部分は驚くほどの完成度で世界が
こちらに飛び込んでくるのが感じられるでしょう。
その世界に登場する人物。
彼、彼女らも情報が蓄積するにつれて、人格がはっきりとわかるようになっていきます。
蓄積が十分ならその人物の心の息吹まで感じるでしょう。
この人はなぜ、こんなことを言うのか、するのか。
わかるようになっていきます。
このお話はそういう読み方もできるのです。
※レビューの完成度 現在37%
※閃きのたびに更新されます
※場合によっては全面刷新も起こります
新体験が新たな驚きを呼び起こし、物語が心に刻まれる。
主人公が女々しすぎるという意見もあるけど、段々吹っ切れてきてる。まあ青さも目立つが、よくやってるのでは?
ただ元カノ陣営が不快すぎる。
元カノも自分から振ったくせにチョロチョロわずらわしい。
元カノ陣営のなんとかとかいう厨二臭い奴は輪をかけて不愉快。
もう関係ないのに一々絡んできて、目障りすぎる……。
ただ、作者がカタルシスの開放を目論んでるのならお見事。
きっちり纏めて皆を気持ちよくさせてほしい。
さすがに昔は色々あったけど、それは忘れて皆を仲良く的なまとめかたはしないと信じたい。
ただ、最優先されるべきものは作者の意向であるし、作者がこうと定めたものならそれがこの作品にとっては最善のものなのだろう。
人間は一筋縄ではいかないのを見事に表現している作品だと思う。
性格と過去から生み出される思想は簡単に善悪で表現できるものではなく、善人で完璧な人間は存在しないし、誰しも苦悩を抱えて生きている姿が、素晴らしい練度で表現されている作品。
初期設定上はよくあるパターンであるが、作中に登場するキャラクター達の、『理解出来ないが確かに現実にもいる』――愚かで浅ましい人達の表現は自分が読んだどの作品よりも秀逸に書かれていると思った。
これ以上はネタバレになるので深くはいえないが、私はこの作品を読み、確かに得られるものはあったと感じたので、繊細な刺激が欲しい人は一度読んでみると良い。
中世ファンタジーの冒険者ものとしては
なかなか丁寧に場面描写されていて良いと思います。
戦闘以外にもしっかり全員で踏破している感じも出ていて、そこも良いかと。
主人公が「もう全部おれ一人でいいんじゃないかな」しているより
登場人物それぞれが、しっかりと役割分担をして、
PTとして話を進めていく方が、
冒険者が活躍する物語としてはやはり面白いですね。
NTRものである以上、当然元恋人と略奪した相手がいる訳ですが、
こういう感じの不快なキャラはなかなか斬新ですね。
表面上は善人のようでありながら他人の心の機微を感じ取れない、
もしくはあえて無視している男の方もアレですが、
過去編での、あの裏切り方を読んだ後だと、
この期に及んでまだ、再会後に主人公を呼び止めようとする元恋人の方が、
下手に善人ぶっている分イラつき度が増しますね。
ざまあな展開を望んでいる読者にはあまりお勧めできないかも。
でも主人公がいずれ報われるのならば、自分はこういう展開も有りかと思います。
昨今流行りのファンタジーは良くも悪くも「ご都合主義」か「理不尽」のどちらかに偏らせすぎるきらいがある。
この物語は、まあまあどん底からスタートするも、簡単にはチート成長もしないし、俗に言うざまあな展開もなかなか起こらない。
かと言って、人がバンバン死んだり理不尽に世界が壊れる話でもない。
そう、ファンタジーはあるけれどかなり現実的な「悩み」や「葛藤」を表現している物語で、リアリティがあるバランスの取れた物語だ。
それでいて、平坦な物語にはならず中だるみも少ない。
最近は少なくなった古来のファンタジーの派生型で王道と評する人が多いのは納得であるが、若い読者が思い描く王道とは少し違うかもしれない。
チートや爽快感重視の物語を求める人には向かないかもしれないが、それでも一度は読んでもらいたい。
悩みや葛藤の中から生まれるファンタジーと言うジャンルがここにあり、その魅力に取り込まれる人もきっといるはずだから。