第31話 人のちんしこを笑うな03

 燦然と輝く一番星。

 見上げた暮れかけの空に、飛行機の灯りと間違うような、おぼろげなそいつ。

 思わず、視線を奪われるのだ。

 自然と、存在を確かにするまで、見つめ続けるのだ。


 一番星なのか、飛行機の灯りなのか、くっきりするまで、立ち止まるのだ。



 道路を自動車が走り、人たちが行きかう雑踏で、俺はコンビニ袋を手に提げて、ただただ時間の経つのを待つのだ。




 飛行機にしては、動かないななんて思って、そのうちまた陽は落ちて、星たちのまたたきが増えていって――。






 ああ、あれはやっぱり、一番星だったのだと、確信して帰路について――。






 そんなだったかもしれない。

 彼女の胸元のほくろとは、一番星だったのかもしれない。


 俺はだから、ちゃんとした真実の存在に、気が付くことができたのかもしれない。


 思わず、俺は彼女の顔を見る。

 恨んだ彼女は、なんだかうっとりと笑っている。



 彼女の胸元に隠れた、南半球の左側の影のほくろは、俺はきっかりと見覚えがあった。



 色っぽいなと、俺は思ったのだ。

 指の腹でなぞってやりたいなと、俺は思ったのだ。


 見間違う可能性なんて、果たしてあるのだろうか。



 写真を何度も見て、何度もちんしこをして、見間違う可能性なんて、果たしてあるのだろうか。




 何度も何度も写真に写って、何度も何度も焼き付けるように見つめて、それで間違う可能性なんて、果たしてあるのだろうか。






 あるはずないのだ、そんなこと――!






 大きなふくらみの影のほくろ!

 細くくびれたくせに、しっかりと脂肪の乗った、柔らかそうな腰つき!


 うっすらとした、淡色のリップに、栗色のボブカット!



 ふっくらとした、二段階右折みたいな、特徴的なパフィー・ニップル!




 どこをどう間違えば、俺は彼女を、写真と別人だと思える――!




 考えろ、考えろちんしこマン。

 裏切ったのは、果たして誰だ。

 考えろ、考えるのだちんしこマン。

 間違ったのは、果たして誰だ。


 考えろ、無い知恵を絞りだし、頭ン中をフレッシュ・ジュースにするみたいに、考えるのだちんしこマン。



 思い出したくもない、過去とか未来とか、地球の誕生みたいな、地球の滅亡みたいな、考え尽くすのだちんしこマンーー!




 裏切ったのは、誰なんだ、間違ったのは、誰なんだ、ちんしこマン――!




 どう考えてもおかしい。

 俺を騙すのに、どうして本人の写真を撮る。


 どう考えてもおかしい。



 写真の中の彼女は、どうあったって、目の前にいる彼女である。




 ならば、どう考えたって、これはおかしい――!






 これは結局、ペテンなどではなく、つまり裏切ったというのはそれでは――俺だ!






 おしっこ・ペーパーが仕込まれた時。

 誰かが見ていると、監視していると俺は思った。

 おしっこ・ペーパーが消えてしまった時。

 愛想を尽かされたと、遊ばれていたのだと俺は思った。


 写真が消え失せて、あの頃のあいつが個室にいた時。



 また再び、いじめられる日々が帰って来るのかと、俺は思ったッ!




 だがどうだ、そんなものは、すべて嘘だ!




 おしっこ・ペーパーは、俺への愛情表明だった。

 おしっこ・ペーパーが無くなった時、ステップアップをして、彼女はセルフィを届けてくれた。


 写真に代わり、本人が個室に忍んでいた時。



 単純に彼女は、愛情を確かめあい、燃え上がったので、タイミングが来たと、それだけだったのではないのか。




 もう写真にブッかけるのでなく、そろそろもう、本人同士にブッかけるタイミングなのではと、そうなんじゃないのか!?




 だって、これが嘘なら、こんな出来過ぎた嘘があるのか?

 胸元のほくろも、リップもボブカットも、腰つきもパフィー・ニップルも、こんなに似すぎるくらいに真似をできるか?


 これが、こんなことが嘘なら、これほどに出来過ぎた嘘が、どこにあるっていうんだ?



 こんなに本人そっくりの写真を、こんなに本人そっくりの別人を、用意できることがあるのか?




 あの頃の、あの時の彼女は、本当に俺を嫌っていたのか――!?




 思い出せ。

 思い出せ。


 深く思い出せ。



 あの最低最悪の、底なし沼で溺れるような日々を、深く思い出せ。




 あの最低最悪の、底なし沼で溺れるような現実を、深く深く思い出せ。






 誤って、顔面ザーメン着陸の失態を犯したあの瞬間を、今こそ鮮明に、記憶の捏造も上書きもなしに、昨日のことのように思い出せ――!






 俺のザーメンは、ものの見事にすっ飛んだ。

 我慢しまくったからか、背中に大きなふくらみを感じたからか、俺の剛直は一番に張り切った。


 俺のザーメンは、ものの見事に、実験の最終段階の弾道ミサイルみたいにすっ飛んだ。



 そしてアポロ11号のように、アポロ13号のように、ソビエト連邦のソユーズ計画のように、彼女の白く美しい月面に、ぴたりとくっついた。




 その時そして、彼女はすぐに、憤怒の表情になった――!




 だが、本当か?

 それは、俺の記憶の、嘘じゃないか?


 隙間の時間が、あったようには、おまえは思わないか?



 脅えきった俺は、その隙間を、忘れたんじゃないか?



 思い出してくれ、ちんしこマンよ。

 思い出してくれ、ちんしこジュニアよ。


 俺には多分無理だから、直接彼女の貞操を汚した、おまえが思い出してくれちんしこジュニアよ。



 あの恐竜時代の、もっと前の、地球の誕生以前の、古い古い記憶を、思い出してくれちんしこジュニアよ。




 あの時彼女は、自分の顔に引っ付いたザーメンを手で拭い、眺めて、微笑んではいなかっただろうか。






 そしてすぐに、舐めてやろうかという自分を押しとどめて、怒ったように見せたんじゃないだろうか。






 直後に、俺の屈辱は頂点になる。

 彼女は仕返しとばかりに、俺におしっこをブッかける。


 俺は虐げられて、人権を奪われて、ヒエラルキーの三角形の、底辺よりも下に突き抜けて、人でないのだと言われたみたいで、そして――。



 彼女が笑っていたのなら、それがすべて、ひっくり返るじゃないか。




 彼女は単純に、ザーメンをブッかけてくれたお礼にと、おしっこをブッかけてくれたのではないのだろうか。






 愛情表現がへたくそなだけで、こいつは、彼女は、ブッかけレディは、恐竜時代から、もっとずっと前から、地球誕生以前から、俺に片想いをしていたのではないのか――?






 頭が混乱してくる。

 身体の脅えが解けていく。


 胸元のほくろに視線を奪われる。



 うっすらと笑んだ、淡色のリップに、視線を奪われる。




 大陸棚みたいな、二段階右折みたいな、ふっくりとしたパフィー・ニップルを、写真にしてやったみたいに、舌先でなぞってやりたくなる。




 思わず、俺は彼女の顔を見る。

 恨んだ彼女は、なんだかうっとりと笑っている。



 彼女の胸元に隠れた、南半球の左側の影のほくろは、俺はきっかりと見覚えがあった。



 色っぽいなと、俺は思ったのだ。

 指の腹でなぞってやりたいなと、俺は思ったのだ。


 見間違う可能性なんて、果たしてあるのだろうか。



 写真を何度も見て、何度もちんしこをして、見間違う可能性なんて、果たしてあるのだろうか。




 何度も何度も写真に写って、何度も何度も焼き付けるように見つめて、それで間違う可能性なんて、果たしてあるのだろうか。




 大きなふくらみの影のほくろ。

 細くくびれたくせに、しっかりと脂肪の乗った、柔らかそうな腰つき。


 うっすらとした、淡色のリップに、栗色のボブカット。



 ふっくらとした、二段階右折みたいな、特徴的なパフィー・ニップル。




 どこをどう間違えば、俺は彼女を、写真と別人だと思える――!




 考えろ、考えろちんしこマン。

 裏切ったのは、果たして誰だ。

 考えろ、考えるのだちんしこマン。

 間違ったのは、果たして誰だ。


 考えろ、無い知恵を絞りだし、頭ン中をフレッシュ・ジュースにするみたいに、考えるのだちんしこマン。



 思い出したくもない、過去とか未来とか、地球の誕生みたいな、地球の滅亡みたいな、考え尽くすのだちんしこマンーー!




 裏切ったのは、誰なんだ、間違ったのは、誰なんだ、ちんしこマン――!




 どう考えてもおかしい。

 俺を騙すのに、どうして本人の写真を撮る。


 どう考えてもおかしい。



 写真の中の彼女は、どうあったって、目の前にいる彼女である。




 ならば、どう考えたって、これはおかしい――!




 おしっこ・ペーパーが仕込まれた時。

 誰かが見ていると、監視していると俺は思った。

 おしっこ・ペーパーが消えてしまった時。

 愛想を尽かされたと、遊ばれていたのだと俺は思った。


 写真が消え失せて、あの頃のあいつが個室にいた時。



 また再び、いじめられる日々が帰って来るのかと、俺は思ったッ!




 だがどうだ、そんなものは、すべて嘘だ!






 彼女は裏切ってなどいなくて、単純にずっと俺に片想いしていただけで、ずっとずっと、ずっとずっとずっと、今この瞬間を待っていたのではないか!






 燦然と輝く一番星。

 見上げた暮れかけの空に、飛行機の灯りと間違うような、おぼろげなそいつ。

 思わず、視線を奪われるのだ。

 自然と、存在を確かにするまで、見つめ続けるのだ。

 一番星なのか、飛行機の灯りなのか、くっきりするまで、立ち止まるのだ。


 道路を自動車が走り、人たちが行きかう雑踏で、俺はコンビニ袋を手に提げて、ただただ時間の経つのを待つのだ。



 飛行機にしては、動かないななんて思って、そのうちまた陽は落ちて、星たちのまたたきが増えていって――。




 ああ、あれはやっぱり、一番星だったのだと、確信して岐路について――。






 ――彼女は俺の一番星だ。











 恐竜時代から、地球誕生前から、宇宙創成の時から、俺を待ち続けた一番星だ――!











 間抜けめ、どうして気づかなかった。

 彼女の壮大な、宇宙の馴れ初めみたいな片想いを。


 間抜けめ、どうして今まで、気づかなかった。



 彼女のひとりきりの、何億年も何十億年も、自分で自分を抱き締めるみたいな、切なくも悲しい片想いを。




 間抜けめ、どうして今まで、永遠みたいにひとりきりにしていたことを、気がつかなかった――!






 寒々とした宇宙に、あんたは今まで、どうして彼女をひとりっきりにしたんだ!







 とたん、愛おしくなる。

 悪い思い出が、一瞬一秒で書き換わる。


 なんだよ、辛く悲しい想い出だなんて。



 なんだよ、人が人として、二本の足で立つことを失った時間だなんて。




 なんだよ、裏切られて、騙されて、嘘つきな女だなんて。




 裏切ったのは俺だ。

 彼女はいつも正直だった。


 裏切ったのは俺だ。



 彼女はただ不器用だっただけだ。




 裏切られているだなんて、思い込んで、その思い込みこそが、俺が彼女を裏切った。




 想いを返すには、さあ、どうする。

 何億年も、何十億年も、片想いを返すには、さあ、どうする。


 想いを返すには、大きすぎるそれに応えるには、俺は、さあ、どうする。



 俺の目の前にいる、女神みたいな少女みたいな、生まれたてのとびきり無垢な存在みたいな、なにもかもを知り尽くした大人みたいな、天使みたいな悪魔みたいな、とびきり等身大なブッかけレディに、俺はなにをしてやれる――!



 ギッ――と、音がした。

 そっ――と、彼女は動いた。


 物欲しそうに俺を見上げ、上着をたくし上げた半裸で、俺に手を伸ばしてきた。



 そろり――と、俺の俺自身を、根元から持ち上げるみたいに、日本舞踊の流れる手つきみたいに、じっくりと撫で上げた。




 物欲しそうに彼女は俺を見上げ、上着をたくし上げた半裸で、彼女の小さな掌で、彼女の小さな手の温度で、俺の俺自身が震え上がった。




 そうか、そうだよな。

 おれは確かに、ちんしこマンなんだよな。


 そうか、そうだよな。



 おまえは確かに、ブッかけレディなんだよな。




 俺たちは聖域の女子トイレで、しこってまんずりして、ブッかけてブッかけられて、舐めつくして飲みつくして、ザーメンの味を、おしっこの味を覚えて、スパイラルでぐるぐる回転して浮上して、過去みたいな未来みたいな、地球の誕生みたいな滅亡みたいな、強くてニュー・ゲームみたいな、セーブ・データの最初からみたいな、ちんしこマンとブッかけレディなんだよな。




 それなら、ひとつしかないんだ。

 それなら、あたりまえのことだ。


 それなら、ひとつしかないんだ。



 写真にしたことを、今ここで、やるべきだ。




 そう、俺はちんしこマンで、おまえはブッかけレディなんだ。






 ブッかけレディ、おまえのその真っ白い肌に、おまえのその真っ白いお腹に、俺の新鮮な搾りたてフレッシュ・ちんしこミルクを、熱々のホワイト・ソースみたいなそいつを、ブッかけてやる時が来たんじゃないか。






 燦然と輝く一番星。

 見上げた暮れかけの空に、飛行機の灯りと間違うような、おぼろげなそいつ。

 思わず、視線を奪われるのだ。

 自然と、存在を確かにするまで、見つめ続けるのだ。

 一番星なのか、飛行機の灯りなのか、くっきりするまで、立ち止まるのだ。


 道路を自動車が走り、人たちが行きかう雑踏で、俺はコンビニ袋を手に提げて、ただただ時間の経つのを待つのだ。



 飛行機にしては、動かないななんて思って、そのうちまた陽は落ちて、星たちのまたたきが増えていって――。




 ああ、あれはやっぱり、一番星だったのだと、確信して岐路について――。




 彼女は俺の、一番星だ。

 俺は彼女の、一番星だ。


 からっぽ同然のザーメンタンクを、身体中の生命エネルギーをかき集めて、満タンにする時が来た。



 三日分どころか、一週間分どころか、一年分どころか一生分どころか、それ以上みたいな、それ以上にそれ以上みたいな、地球のみんな、ちんしこマンにちょっとだけザーメンを分けてくれ――!






 さあ、ここぞ一世一代の、男の見せ所のちんしこタイムだ――!

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