第32話王族からの依頼

執事に案内されてたどり着いた部屋には――。


イザベラ王妃、アレフ王子、ローラ王女の3人が既に席に座って待っていた。

メテオラ第一王女は、元々体が弱いらしく談話会には参加しないようだ。


「初めての王城はどうだい?そんなに緊張しなくてもいいからね」


第一王子のアレフが、緊張を皆の解そうと軽口でそう言う。


「さすがに王族の御歴々を目の前に、緊張するなって言うのは……」


俺がそう言うと、

それもそうだね。とウインクしながら王子が返してきた。

男にウインクされても嬉しくない!


「それでこの席では、何の話を致したら宜しいので御座いましょうか?」


俺の敬語、めちゃくちゃだな。


「うん、実は王家の内情の話なんでオワレスの街ではちょっと出来なかったんだけどね……」


 何でも王城は魔法の結界に護られており、侵入する事は出来ないのだが、

オワレスの様な、古い城や街では防諜能力も乏しく……。

他国の間者や貴族の諜報部隊等に聞かれる恐れがあるらしい……。

そんなもん本当にあるんだ。


昔々の戦国時代にも、忍者とかあった位だから寧ろある方が普通なのか。


 「それで、聞かれた政策の失敗の内容なんだけどね、我がアルステッド国内部の治水や街道の整備、畑などの対策は、初代から力を入れてきて――。

うまくいってたんだけどね、父の治世でより国内の流通を活性化させ経済を潤滑にまわす為に……。海の向こうと貿易を行って、この地には無い食物や鋼鉄製品、ガラス製品、繊維製品を輸入しようとしたのが発端なんだよ。

その為に、国費を投じ大型船舶を他国から購入し、自国でも船の建造に着手し出した所で問題が起きたんだ。」


それが、運が悪かった事に繋がる訳ね?


 「そう、本当に運が悪かったとしかいい様が無い。何せ今までは、海外に問題なく出向していけたのが、ここ2,3年の間に航海中に出没するオクトパスによって船が沈められ――貴重な船乗り達も命を落としたんだから」


あーなんかあるあるだなぁ。

地球のB級映画でもある話だしさ……。


「それでなんだけど……きみ…「断る!」…」


クロ、話は最後まで聞こうよ。

ジロリと睨まれた。


「クロ様、訳を聞いてもいいかな?」

「訳も何も、わし等には一切関係が無い話だからだ!」

「そ、そんな……クロ様……」


ローラ王女が、今にも縋りつきそうな口調の声を漏らす。


 美人に縋りつかれるって――男冥利につきるよね!

俺も縋りつかれたい!

もしそうなったら……。

あんな事やこんな事を……。

げふんげふん。


 おいおい……。クロさんそんなに睨まないでよ!

俺だって健全な男なんだから!

性に興味津々のお年頃よ!


本音を言えば……俺には賛成も反対も言えないな。

だって、クロが何も理由もなしに両断するには――訳がありそうだもん。


「オワレスの王城を攻めた時の魔法、コータ殿の手腕に、クロ様のお力ならばオクトパス討伐は問題ない様に思えますが?」

「問題はそこではないわ、たわけめ!」

「では、何が問題だと言うのでしょうか!?」


クロは、しばらく黙ったまま思考を巡らせてる。


 俺も思うけど、何が問題なんだろ?

危なく無ったら、いつもみたいにクロに乗れば逃げ切れるし。

――海の上だと何か不味いのか?


 んーいくら考えてもまったく分からん。

そもそも、クロのブレスで一発で死ぬんじゃ?

オオダコだっけ?オクトパスって……。


クロもしばらく思考していた様に見えたが、そのうち意を決し語り出した。


「お主等が、この地を統一してまだ数百年だろ?それならば知らなくても無理は無いが……海はポントスの領分だ!」


 えっ?誰それ?

また、聞いた事の無い名前が出てきたよ!

ネットがあれば調べられたのに……。

こんなポンポン名前飛び出してきて――。

この低脳の作者が、覚え切れてるのか?

いやいや……流石に無理っしょ?

学なし、記憶力なし、金なし、嫁なしで無いものの方が多いんだからさ!


「その領分を侵す!と言う事だからだ!」


あ~ぁ、王族も訳が分から無くなって困惑し始めたわ。

俺も、作者も混乱してるんだから当然だね!


 「お主等人間は、自分達の都合で、本当には居ないと思ってる神を勝手に造り出し、民草を統率するのに都合のいい創造神の一神教だけを認め、教会まで築いておる様だが――神は実在する!しかも神は一人ではない!」


「そ、そんな……まさか……」


 第一王子が、混乱と苦悶の表情で首を俯かせた。

王子のこんな顔始めて見たな……。

美男子のこんな顔なら、毎日拝んでもいいかもね!


「では古竜クロ様、そのポントス様が海を取り纏める神だと?」


 イザベラ王妃、意外と冷静だな……。

そう、見えるだけなのか?

やっぱり、こういう美人はいいな!

ぐっとくるわぁ!

後20歳若かったら、俺とけっ……ごふんごふん。


 「ああ、そう言う事だ!ポントスの領域で大型の魔獣を退治する。という事はポントスの子を殺める事と同位。そんな真似を我がすれば――。例えオクトパスを倒したとしても、次はポントスが出てくるぞ!その結末はわかっておろうの?」


 あーなるほどね……さすが竜神。

古くからの神とも、やっぱり知り合いだったのね。

俺もびっくりだわ。

だから日本を出て来る時に……。

神は、何もしない。って知った風に言っていたのか。


 もしクロが、オクトパスを単独撃破しても……。

ポントスが出てきて最悪はこの国も消失するっと――。

悪い国王とかの国なら、その手のMPKもありだね!


「そんな……それでは、もう打つ手は無いではありませんか!」


ローラ王女……そもそも、俺達にそんな大事を頼むのが問題だと思うよ?

だって、クロ以外は一般人だもん!


流石に今の会話を聞いてた、俺の仲間達も声を出す事が出来ない。

古代から生きてる竜が――ここまで拒否してるんだ。


 ちっぽけな人間。

一般人の範疇を、とうに過ぎてる。

話がデカ過ぎでしょ!

だって神だよ?

神話の世界の神の喧嘩なんて――。

一瞬で国とか、滅ぼしちゃってんじゃん!

そんなものと、戦えとも、戦うとも誰も言える訳が無いじゃんね。


それこそ、蟻んこの様に、潰されておしまい BAD END!!だよね。


 皆が、声を出せずに暗い雰囲気が談話室の中を充満する。

もう5分は経過しただろうか……。

こういう時の、時間の流れは、遅くて感覚が分からなくなるね!

微かに息をする音だけが――響いている。


 王妃は、沈んだ顔でただ下を向いてるだけ……。

王子も、悔しそうに唇をかみ締め足元を睨んでいる。

王女は……あーあ……泣いちゃった。

ぐすんぐすん泣きながら、鼻水だらけの顔で俯いている。

こんな活発な女の子でも泣くんだね?っていうか……。

泣き顔やべー!すんげーぶさいく!


――ブン。

…………………………………………あれ?


一陣の風が吹いたと思ったら……。


椅子から吹き飛ばされ……。


俺の記憶は途切れた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る