第243話 イネちゃんとマッドゴブリン
肉体を引きちぎるように私の拘束から体の一部を抜け出したゴブリンは液体のような四肢を新たに生み出して再び私に向かってその拳……まぁ拳でいいよね、腕から伸びてるし。ともかくそれを振り下ろしてきた。
「うげ……」
これはなんというか、お父さんたちがプレイしていたホラーゲームにこんな化物が出てきていたような気がする。
最も、ゲームのほうは血が出るのなら殺せるという法則に従っていたけれども、今私の目の前にいるこいつはその法則から逸脱しているように感じる。
『顔も再生して行ってるみたい……うわこれはちょっと食欲が……』
「……もう仕方ない。大聖堂側を出来うる限り強化して核で吹っ飛ばす。再生できないほどに蒸発させれば、流石に倒せると思うし」
『言いたいことは私にもわかるけれど、現代兵器は……』
「うん、流石に現行のボブお父さんたちの故郷が保有している核は使えないよ。流石にあれはいくら大聖堂側を強化しようがあまり意味がないレベルだし……だからね、冷戦って呼ばれていた時代に作られたっていう都市伝説的なアレ、あれなら範囲を限定できるし、なんだったらゲームの方からとって核グレネードとかでもいいんだよ、とにかくアレを消し飛ばせした上で周囲の被害が少なければね」
でなければあれは多分ずっと動き続ける気がする。
『できればココロさんとヒヒノさんを待ってって言いたいところではあるけれども、そうも言ってられないのかな』
イーアがそう言うと、ゴブリンが再び私に向かってその自由になった拳を振り下ろしてくる。
先ほど喰らったものよりは圧倒的に受けやすいというか、ダメージ自体はなかったのだけれどもその分避けにくくなっているし、私以外が攻撃を受けた場合はおそらくその限りではないことが想像に固くない。
「私がココロさんとヒヒノさんの立場だったとしたらどう動くのか、イーアはどう思う?」
『……うん、まぁ市街地に向かうと思う』
「そうなると救援は私のいるここが1番最後って可能性が極めて高いよ、ココロさんとヒヒノさんからササヤさんへの評価次第で変わる可能性は否定できないけどさ。最悪を想定しておいて自力で対処できそうならやるべきだと思うよ」
最も、その最悪っぽいものが今も私に向かってジェル状の腕を殴りつけてきてるんだけどさ。
見た目最悪、動きも今は最悪、再生能力なのか復元能力も最悪……何より私にとってはそれがゴブリンっていうのが最悪だからね、一刻も早く吹っ飛ばしたい気持ちがとても強くなっているのが自覚できるくらいに大きくなっているわけで、自分でもかなり攻撃的になっているのがわかる。
この体をジェル状にしてでも動くっていうのがもう私にはわからない内容ではあるけれど、流石に対処しないと大聖堂に近いしジェル状の腕が伸びないとも限らないから今すぐできそうなことだけはやらないとか。
「お父さんたちのゲーム直伝!核グレネード!」
ゲームでの範囲を考慮した感じに生成したので爆発もその程度ではあるものの、威力自体はしっかりとウラン熱反応で相手を燃やすタイプにしてあるので、超強力な焼夷グレネードのような感じで大陸限定で言えば割とクリーンな武器に分類できるんだよね、放射線に関しては無視できるし。
最も、構造を単純化しすぎたせいで爆発っていうのもウランの熱反応でグレネード内部の空気が膨張したものだから、それそのものの威力は大したものじゃないし、多少威力を上げるために火薬自体は少し入れてはいるものの爆発自体はおまけ……というかやっぱ爆発しないと見栄えが悪いじゃない?
『本当に投げた……放射能は浄化できるし、大陸の人は放射能耐性あるからって無茶しすぎだよ』
「でもイーア、流石に核なら有効っぽい……いやまぁ放射熱で燃やしてるだけではあるけどさ」
私が勇者の力で生み出せる熱量の高い攻撃となると溶岩かこの放射性物質による攻撃以外にないからね、溶岩のほうが後に残るのが大陸という世界である以上はこっちのほうがエコで修繕しやすいっていうのがほかの世界との決定的な違いでもある。
でなければ私は今こうして核で攻撃してないからね、大丈夫だってのはヌーリエ様から囁かれて確信になってたしただぶっぱなしたいわけじゃないことはちゃんと書いておかないとね、うん。
ただチェレンコフ光……とは違い赤熱の色がゴブリンを包み込んでジェル状の腕は適度に固まる感じでゴブリンの動きは鈍くなってはいるものの消し飛ばすという状況には程遠いのは少し想定外ではあるけれども時間を稼ぐという次点の目標は達成できたのかな。
『ううん、イネよく見て』
イーアの言葉にゴブリンの動きを観察する感じに視線を移すとそこには燃えてぐったりとした巨体……ではなく立ち上がり全身マッドスライムのように変化している最中のゴブリンだった。
「なんというか……これどっちが元々の形なのか」
そもそもゴブリンなのかも怪しくなってきたなこれ……そういえば兵士の人が対魔王の最終兵器だとかなんとか言ってたっけか、となればこれだけしぶといのも理解はできるけれど目的を果たした後はどうやって処分……あぁ異世界の人は大陸に廃棄処分してたんだったね、うん。
『考えてないでとにかく大聖堂から離さないと!次の攻撃もできないよ!』
「と言ってもこの全身マッドスライムっぽい感じなのは……あ」
もしかしたらと思い、私は浄化の力を発動させる。
空気を振動させるほどの咆哮?みたいな動きをしてからマッドスライムっぽいものがゴブリンへと戻り始めていった。
「……こいつ、ゴブリンとマッドスライムの両方の特徴を備えた新種とかそんなこと、ない……かな?」
『それはわからないけれども、少なくとも目の前のこいつはそう思えるよね』
でもこれなら何とかできるのはさっき私自身が証明して見せていたからね、ここはもう大聖堂側を超絶強化してやらざるを得ない……私は最初から大丈夫だし。
「
と言ってみるものの流石に威力とかを考慮して1発だけ。
流石に核をクラスター爆撃するほど私は世紀末なモヒカンさんみたいな思考はしてないし、何よりこの1発だけでも……。
空気を震わせる咆哮と共にゴブリンは爆風で吹っ飛ぶ……最もデイビークロケットはちゃんと資料で見たとおりの性能にしていたから今まさに私や大聖堂、そして麦畑を叩きつけるような爆風が襲っている。
まぁ麦畑以外はちゃんと耐えられるように考慮して強化していたし、私の強度も勇者の力で上げられるだけ上げているからびくともせず爆心地でキノコ雲を眺めているわけだけど……なんというか自分も割と人間やめてるなぁと実感してしまった。
『イネ、追撃!』
最もその人外っぷりはゴブリンも同じでデイビークロケットの直撃を受けたにも関わらずまだ動いている……っていうより外見だけなら無傷なんですけど本当こいつなんなの?
「追撃って言っても……デイビークロケットの釣瓶撃ちなんてしたら地形が変わるどころじゃ済まないよ、流石に」
それに今それを直撃させたにも関わらずダメージを受けているようには一切見えないというのが徒労感を感じてるくらいで……。
『架空の武器でいいよ、もう!ほら、コーイチお父さんのアニメに出てきた……』
「もしかして、ビーム兵器?」
確かに超々高温の重金属粒子を圧縮したものをぶつければ大丈夫だとは思うけど……。
今まさにそれ以上の威力だと思うものをぶつけたわけで、流石に核以上の威力にはならないんじゃないかなと私は思ってしまうわけだ。
『だから高威力な奴をさ……』
イーアはそう言うもののそんなに高威力となるとそれこそ核以上に地形を変えかねないものになりそうな気もするのだけれども……。
『大丈夫です、私を信じてください』
あ、これはヌーリエ様。
でも大丈夫って……それこそ本当にロボットが要塞に向かって撃つようなのとか、ロボットに撃つにしても明らかにオーバーキルするようなものでないと、あのゴブリンは吹き飛んでくれなさそうなんだけど。
『はい、イネちゃんの考えていることは私にも伝わっていますので、大丈夫です。それにヒヒノちゃんも似たような手段で退治しましたので、麦畑を気にせずやっちゃってください!』
あ、倒したのヒヒノさんだったんだ。
って今はそれどころじゃない……ヌーリエ様からお墨付きを得たわけでここでやらないと嘘すぎる。
それじゃあいっそのこと超威力の……。
『あ、流石にそのレベルは……』
山が削れるレベルの威力は流石にアウトだった。
じゃあ、最初に見せてもらった奴の主人公ロボの持ってた奴で……。
私がイメージをすると右側の地面が盛り上がり右手付近で止まって姿を変えていく。
形だけなら瞬時にできる、でも今は実際にビームが撃てないといけないし、核よりも単一攻撃能力の面で優れてないといけないという無茶ぶりされているわけで……集中を途切れさせないようにしながらイメージを進めていく。
『あ、内部構造はおそらくこうしたほうが……』
幸いヌーリエ様は実際に稼働するものを知っているらしく私のイメージがそのものとずれた場合にアドバイスを……ってヌーリエ様ビーム兵器を知ってる!?
『物理法則的に私の知っているものそのままは不可能ですし、イネちゃんの知っているものも流石に無理なので、無理な部分は力で補うという形にしてください』
ヌーリエ様が丁寧に
重金属粒子を圧縮、縮退する部分は勇者の力で強制的に行う感じなのか……これはある意味最強のセーフティ。
その素材部分は大陸の地中に含まれているものを1度マントル層まで持って行って溶かしてから安定させて弾薬カートリッジ風にして……あぁこれならあのロボットの持ってる奴で……。
『イネ、早く!』
イーアが叫ぶものの今私はちゃんと生成するのに集中しなきゃいけないわけで……私が数発殴られるのは覚悟の上なので今はイメージを固めることに集中して……。
その瞬間、私は立っていた地面ごと大聖堂へと叩きつけられた。
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