第85話 新しい友達(上) 


 間口を二軒分取った、立派な三階建ての建物が、ここ王都のギルドだ。

 入り口を入ってすぐの待合室も広く、ギルドとは思えないほどオシャレな内装がしてあった。

 俺に気づいた冒険者たちが、口々に挨拶してくる。


「おっ!

 英雄シローじゃねえか!」


 ぐはっ!


「ホントだ!

 久しぶりだな、英雄シロー!」


 ぷべっ!


「へえ、あんたが噂の英雄ねえ!」


 あべしっ!


 心理的ダメージを受け、床に膝を着いている俺の所に、ギルマスのグラントがやって来た。


「おいおい、どうしたってんだ、シロー。

 気分でも悪いのか?」


「ギ、ギルマス……。。。」


「そりゃいいがって、おい、なんだ?

 いってえ、どうしたってんだ、シロー!

 こんなところで寝るんじゃねえ!」


 ◇


 目が覚めると、知らない部屋にいた。


『(・ω・)ノ 帝都のギルドですよ』

 

 点ちゃんがいるので、「知らない部屋」は一瞬で終わっちゃいました。

 ああ、そうか!

 嫌な言葉を何度も聞いて、気を失ったのか。

 頭に濡れタオルが載っているから、誰かが介抱してくれたのだろう。


「目が覚めましたね」


 あれ? ルルがいる。なんで?


「グラントさんが、お城に使いを出してくれたんです」


「他のみんなは?」


「王妃様やシュテイン王子から、それぞれ歓待を受けています」

 

「ナルとメルは?」


「おじい様と一緒に街で遊んでいます」


「そうか……コルナとコリーダは来なかったの?」


「それが……グラントさんからの依頼が、魔獣の討伐なんです」


 ルルはそう言いながら、俺のお腹で丸くなっているブランを撫でた。


「ああ、だから君だけが来たのか?」


 ポータルズ世界群では、ルルも金ランクの冒険者だからね。 

 

「討伐の対象は、どんな魔獣なの?」


「それが――」


 ルルが答えようとした時、部屋の扉が開いてグラントが入ってきた。


「目が覚めたみてえだな。

 頼みたい依頼があるんだが、その様子じゃ無理かもしれんな」


 ルルがブランを抱きあげてくれたので、俺は上半身を起こした。


「いや、もう大丈夫だよ。

 で、討伐するのは、どんな魔獣なの?」


「それが、やっかいな相手でな。

 単体でも銀ランクの上、大きな群れになってる。

 しかも、特殊個体がその群れを率いている。

 ヘルポリって街があるんだが、その西に広がる大きな森に棲んでるんだ。

 街の住人が、怖がっていてな」


 ヘルポリ?

 旅の目的地、あの神樹様がいる街じゃないか。

 あそこが襲われる可能性があるなら、どうあってもこの依頼は受けなければならない。


「分かった。

 討伐依頼を受けよう」


 こうしてルルと俺は、見たこともない魔獣と戦うことになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る