第59話 宝石探し(上)
その日の夜は、泊る場所がなかったので、新製品の『ポチボンカプセル』を使うことにした。
銀さんに空いた土地を紹介してもらい、そこでカプセルのボタンをポチっと。
ボンッ!
空き地に、一瞬で『土の家』が現われる。
それを見たタムが驚きの声を上げる。
「うおーっ!
なんだこれ!
師匠、見て見て!
なんかすげえぞ!」
話しかけられた銀さんも、目を丸くしている。
「な、なんですか、これは!?」
「タム、やってみるか?」
「うん、やる!」
「カプセルのぽっちを押したら、すぐこの辺りに投げてごらん」
タムに『ポチボンカプセル』を渡してやる。
「よーし、行くぞー!
それっ!」
ボンッ!
「うわーっ!
家ができた!」
タムがぴょんぴょん跳びあがって喜んでいる。
「パーパ、ナルにもちょうだい!」
「メルにもー!」
結局、ナルとメルもポチボンして、四軒も家ができてしまった。
まあ、割と人数いるんで、それでいいんだけどね。
◇
『ポチボンカプセル』から出した『土の家』で一夜を明かした俺たちは、この世界で予定していた仕事にとりかかった。
それは、宝石探しだ。
かつて俺がこの世界から去る時、タム少年からもらった青い石『タムライト』は、『枯れクズ』を利用したエネルギー変換の触媒になることが分かった。
そのため、この世界に滞在中に、できるかぎり質が良い石を集めるよう、研究者たちからお願いされている。
簡単な朝食を済ませると、飛行機型点ちゃん1号に全員が乗りこんだ。
ソファーやクッションの上に思い思いの姿勢でくつろぐみんなに声を掛ける。
「今日はみんなで宝石探しをしてもらいます」
「お兄ちゃん、宝石ってなに?」
コルナの三角耳がぴくぴくしている。
彼女、宝石って聞いて、期待してるな。
「それはこの先生に教えてもらおう。
タム、頼むよ」
タム少年が椅子の上に立つ。
彼はなぜか胸を張っている。
「今日は、ボクが先生だよ。
タム先生と呼んでね。
今日探すのは、この石だよ」
タムはポケットからビー玉くらいの青い玉をとり出し、それをみんなに見せる。
「この石は緑から青まで、いろんな色があるから、なるべく青に近い石を探してね」
「タム君、それはどこにあるんだい?」
翔太、エミリーと並んでソファーに座った、ハーディ卿が尋ねる。
「ボク、あ、先生が教えてあげるよ!」
「タム、カワイイ!」
なぜか黒騎士が頬を赤く染めている。
「じゃあ、みんな揃ってるね?」
「シローさん、そういえば、ミミさんとポル君の姿が見えませんが?」
ショーカが今頃になって気づくとは、ミミとポルは可哀そうだね。
「あの二人は、昨日の内に現地周辺を調査しています。
そこは森の中ですから、魔獣がいるかもしれませんからね」
「なるほど。
そういえば、あのお二人は冒険者でしたね」
こういう調査は、まさに冒険者にぴったりだ。
彼らが念話連絡をしてこないことから考えても、調査の方は順調なのだろう。
「では、宝探しに出発ー!」
「「わーい!」」
タムはもちろん、ナル、メルも盛りあがっている。
「ショータ、たくさん取ろうね!」
「うん、がんばろう!」
「エミリー、お父さんと一緒に――」
「ハーディ卿、我々も子供たちに負けられませんね」
エミリーに無視された形になったハーディ卿を、苦労人のショーカがフォローする。
「え、ええ……そうしますかな」
ハーディさん、ちょっと可哀そう。
『(*'▽') ご主人様も、ナルちゃん、メルちゃんと一緒に宝探ししたかったよね?』
グサッ!
「ミ~ミ」(まあ、元気出して)
ブランちゃんは、優しいなあ。
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