第69話 ポータルを探そう(3) 

 ナゼルの屋敷で、俺は兵士たちに取りかこまれてしまった。

 ソファーに座る俺に兵士たちの剣やワンドが向けられる。

 俺はナゼルに入れてもらったお茶を、のんびり飲んでいる。


『(・ω・)ノ ご主人様、少しはこの状況に緊張感を持ちましょうよ』


 そうはいってもね、点ちゃん。

 やっと目的地に着いたんだよ。少しくらいゆっくりしてもいいんじゃないかな?


「役所から王都に連絡を入れたら、禁足地調査の命令など出されていなかったぞ!

 聞いてるのか!?

 なぜ嘘をついてまで、ここへ案内させた!?」


「あれ、ナゼルさん、まだいたの?」


「き、きさまっ!」


 兵士の中で、一番年かさの男が口を開いた。


「おい、お前!

 正直に答えんか!

 ここで答えるか、駐屯所で拷問されてから吐くか、どちらを選ぶ!」


 こうなると、さすがにしょうがないなあ。

 

 俺はある人物に念話を繋いだ。


『ハロー!

 聞こえるかな?』

  

『おや、シローさんの声が聞こえたようだが、気のせいだろうな』


『いや、気のせいじゃないから』


『シ、シローさん!?』


『うん、そうだよ』


『これ、どうなってるんです?』


『俺の能力で念話してるんだ。

 詳しいことは、教えられない』


『そんなことはいいんですが、世界を崩壊の危機から救う手がかりは見つかりましたか?』


『ああ、見つかったと言うか、もう目の前まで来てる』


『おおっ!』


『それで、こっちは少し厄介事が持ちあがっててね。

 君にこちらへ来て説明してほしいんだ』


『それはいいですが、今どこですか?』


『ヘルポリって街の禁足地がある屋敷だよ』


『ああ、あそこですか!』


『すぐ来てもらってもいいかな?』


『それはいいですが、少なくとも一週間ほどかかりますよ』


『ああ、それは俺がなんとかするから』


『なんとかする?』


 気が付くと、兵士たちやナゼルが、俺の方を信じられないという目で見ている。

 何なのこの人たち?


『(・ω・)ノ ご主人様が念話している間に、みんなが剣や魔術で攻撃してましたよ』


 ああ、そういうことか。

 でも、もう大丈夫、この人を呼んだから。


 ぱちりと右手の指を鳴らす。


「あ、あれっ!?

 こ、ここは!?」


 ソファーに座る俺のすぐ横にシュテイン皇太子が現れた。


 ◇


「シ、シローさん、これはいったい!?」


「シュテイン、ご苦労様。

 ここ、禁足地がある屋敷だよ」


「そ、そんなことを言われても、今まで……」


 窓から外を見たシュテインが固まっている。


「ナゼルさん、嘘をついたのは悪かったが、皇太子を知ってるっていうのは本当だよ」


 ナゼルの方を見ると、なぜか両手で自分の顔を隠している。

 そして、なぜか彼女の両耳がまっ赤になっている。 


「ナゼルさん、どうしたの?」


 見回すと、兵士たちも赤い顔をして、下や上を向いている。

 みんなどうしたの?


「シローさん、みんながこういう態度を取っているのは、なぜだと思います?」


 シュテインの声が異様に冷たい。


「い、いや、分からない。

 なぜだい?」


 シュテインは、おもむろに自分の股の辺りを指差した。

 よく見ると、彼は上半身だけきちんとした格好をしているのに、下は薄い絹のようなタイツ姿で、局部の形がもっこり浮きでている。


「……もしかして、着替えてる最中だった?」


「もしかしなくても、着替え中でしたよ」


 冷たい! シュテインの言葉が氷のよう、いや、絶対零度だ。

 

『(; ・`д・´)つ なにやってるーっ! 反省しろーっ!』


 これはさすがに、言い訳が利かないかも。

 でも、シュテインは、やっぱり女の子じゃなくて男の子だったね。


『(; ・`д・´)つ ばっ、馬鹿ものーっ!』

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