第39話 地球世界の神樹6 ― 南アメリカ ―


 ハーディ邸から、エミリーと翔太を呼びよせた。


 焼き畑の広がりは、神樹様の直前で止まっていた。

 ここら辺り一帯は、国の自然保護区になる予定だ。

 この国に『枯れクズ』を売る条件として俺が要求した。


 神樹様はそれほど大きくなかったが、複雑に曲がりくねった幹がその年月をうかがわせた。

『枯れクズ』を神樹様の根元に埋めたエミリーが、その幹に手をかざす。


 木が光った後、俺たちの頭に念話が流れこんできた。


『エミリー嬢ちゃんや、ありがとう。

 シロー、ワレを救うてくれて感謝する』


『神樹様、どうしてエミリーの名前や、私がしたことをご存じなのですか?』


『私の事はショーロと呼んでおくれ。

 お前たちの事は、木々から聞いたのさ』


『聞く?』


『私の働きはね、木々が見聞きしたことを伝えることなのさ。

 若い頃、聖樹様と話せるときに教えてもらったけれど、こういった力は珍しいらしいよ』


 それが、ポータルズ世界から失われるところだったのか。

 危ないところだった。


『ショーロさん、もう聖樹様と話せるはずです。

 試してみてください』


 エミリーが神樹に微笑みかける。

 しばらくの静寂の後、聖樹様から再び念話が入った。


『エミリー嬢ちゃんは、巫女様じゃったか!

 失礼を許しておくれ』


『いえ、気にしていませんよ』


『それにショータといったか、そこのわらわは巫女様の『守り手』だそうではないか』


『はい、神樹様。

 ボクがエミリーの『守り手』です』


『巫女様のこと、よろしく頼むぞ』


『はい、もちろんです』


『シロー、お主が以前救うた『光る木』の仲間たちは、神樹同士の繋がりを強め、我は神樹と普通の木々との繋がりを強めるのじゃ。

 我に力が戻れば、神樹たちが木々の助けをより多く受けとれるようになるぞ』


『そのようなお方がご無事で何よりでした』


『お主のおかげじゃよ。

 お主の力、あれは明らかにポータルズ世界群が、お主に与えた力じゃな』


『そうですか。

 俺は聖樹様のお言いつけ通り、エミリーを守るだけです』


『お主たち三人は、世界群にとり誰一人かけがえのない存在じゃ。

 くれぐれも、その身を大事にな』


『過分なお言葉、ありがとうございます』


『では、もう行け。

 他の神樹たちが巫女様を待っておる』


 エミリー、翔太と俺は、神樹ショーロ様に別れを告げた。

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