第24話 『光る木』の神樹


 天竜たちの竜王様詣りゅうおうさまもうでも終わり、そろそろ最初の卵をかえそうかというときに、点ちゃんから連絡が来た。


『(・ω・)ノ ご主人様ー、神樹様からお話があるって』


 え? 点ちゃん、神樹様ってどこの神樹様?


『(´・ω・) それは『ゆりかご』の部屋にいる神樹様に決まってるでしょ』


 え? でも、『ゆりかご』をあの部屋から出すとき、お話しようとしたけどできなかったんじゃないの?


『(/・ω・)/ 神樹様は今まで『ゆりかご』に力を使っていたから、おしゃべりできなかったみたいですよ』


 なるほど、そういうことか。

 俺は、急いで『ゆりかご』が置かれていた部屋に向かった。


 そびえたつ神樹様の美しさは相変わらずだった。ただ、以前見た時より虹色の光が強くなっているような気がした。

 神樹様の前に片膝をつく。頭の中で、ゆったりした低い声が流れる。


『シロー、『ゆりかご』のこと感謝する』


『いえ、私がやりたくてやったことですから』


『お役目から解放され、やっと他の神樹や聖樹様とも繋れた』


『それはよかったです』


『聖樹様の所をなるべく早く訪れるようにというお主への言伝ことづてをいただいておる』


『分かりました。

 竜王様のお手伝いが済んだら、なるべく早くうかがいます』


『お主、「地球」という世界から来たそうだの』


『はい、そうです』


『その時一緒に来た仲間も連れてくるようにとおっしゃられていた』


 さすがは聖樹様、何でもご存じだな。


『そのおりに竜の秘宝も持参せよ』


『承りました』


 うーん、でも、「竜の秘宝」ってなんだろう。あの三つの黄金色をした玉の事かな?


『それから、これは我からの頼みごとなのだが……』


 神樹様からの頼み事?


『これを外の森に埋めて欲しいのじゃ』


 はっと見上げると、以前聖樹様の所で見たような、小さな羽がひらひらと落ちてくる。地面に落ちる前に全て受けとめる。羽子板の羽根のようなものは五つあった。

 外側の皮を外すと、直径三センチほどの透明な球が出てきた。

 内側からぼんやり白い光を放っている。


『それを埋める時は、なるべく他の木と離れているところに頼む』


『ああ、それならちょうど心当たりがあります』


 俺が『枯れクズ』を回収した平地のまん中がいいだろう。

 平地は七、八か所あったから、そのうちの広いものを選んで埋めよう。


『感謝する。

 名残惜しいが、そちとはこれでお別れじゃ』


『えっ? 

 お別れ?』


『我は、長いこと『ゆりかご』の世話をしておったので、あれと共生関係にあったのじゃ』


 えっ? ということは……。


『我が命はここまでじゃ』


『そんな……』


『悲しむでない。

 我らは特別な存在。

 個々で生きているように見え、個々ではないのじゃ』


 以前から推測していたことを思いうかべた。


『どうやら、お主は我らの秘密、その端っこをとらえておるようじゃな。

 点の子よ、お主にも世話になったの。

 感謝するぞ。

 では、さらばじゃ』


 光る神樹様は最後の念話を伝えると、すごい輝きを発した。俺のレベルアップなど、比較にもならない。


 周囲が見えない光の中で、チャリーンと鈴が鳴るような音がした。

 光が収まると、目の前には大量の『枯れクズ』が積みかさなっていた。

 俺は神樹様の去り際のいさぎよさに心を打たれ、しばらく動けないでいた。


『(・ω・)ノ ご主人様ー』


 点ちゃんの声で、はっと我にかえる。


『(/・ω・)/ 早く頼まれたことしましょうよ』


 そうだね。この玉を埋めなくちゃ。


『(・ω・)ノ〇 あと、この『枯れクズ』は、他のとは別の点収納に入れておいてください』


 あれ? 点ちゃんも『枯れクズ』に興味が出たの?


『(Pω・) 違いますよ。

 特別なものだから、調べたいだけです』


 なるほど、純粋に知的な興味があるだけか。


 これからの行動が神樹様の言葉で運命づけられているように感じ、俺は不思議な気持ちになるのだった。

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