第32話 付与 融合


 長い浮遊感の後、足元に衝撃があり、俺は自分が一つ下の台地にいることに気づいた。


 ボードは、相変わらず、もの凄いスピードで疾走中だ。頭の中で、点ちゃんに停めてくれるようお願いしてみる。


『ヒャッホーッ!』


 ああ、聞いてないな、こりゃ。


 S字を描いて滑るボードは、あっという間に、台地の切れ目に。

 再びジャンプ。


 て、点ちゃん、も、もう許して……。


 しかし、点ちゃんは、ボードコントロールに夢中で、俺の言葉など届いていなかった。


 更にジャンプは続く。


 ◇


「はあ~……」


 精魂尽きはてた状態で、俺は一番下の台地、その草原に横たわっていた。ここより下に降りると、蜂の大群がいるから、さすがに点ちゃんも、ここで停まってくれたようだ。


『ご主人様ー、大丈夫ー?』


 点ちゃんも、少し心配そうだ。


 ああ……大丈夫じゃないけど。点ちゃん、面白かった?


『✨(^▽^)/ すっごく、面白かったー』


 点ちゃんが楽しかったなら、まあいいか。

 そういうことを考えていると、俺の体が光りだした。この状態で、レベルアップですか。

 俺は体に力が入らないから、横たわったままだ。身体から出る光は、次第に強くなっていく。


「パーパ! 

 大丈夫?」

「パーパが、光ってる!」


 そういえば、ナルとメルは、俺のレベルアップ見るの初めてだっけ。しかし、このタイミングで来たっていうことは、二人も連続ジャンプしたんだね。


「ま、眩しい……」


 コルナの声もするが、光で辺りが見えない。


「ナル、メル、心配しなくても大丈夫。

 これは、パパの魔法が、強くなるときに出る光だから」


 とりあえず、二人を安心させておく。

 五分くらいはそうしていただろうか。やっと、光が収まると、辺りの様子が見えてきた。

 ナルとメルが心配そうに、横たわる俺をのぞきこんでいる。コルナは、二人の背中に手を置き、その後ろに立っていた。


「レベルアップ、終わったようね」


「ああ」


 パレットを出してみる。

 スキルをタップと。


 レベル14 付与 融合


 融合か。レベル10で手に入れた、「連結」スキルとは、どう違うんだろう。

 点ちゃん、融合って何?


『点を付けた二つのものを、解け合わせることができますよ』


 う~ん、今いち分かりにくいスキルだな。


『点を着けた部分同士でも、点を着けた材質と材質とでもくっつくから便利ですよ』


 うーん、なおさら分かりにくくなったな。


『こういうことですよ』


 足元の草葉が二枚、空中に浮く。

 地球の稲に似たその植物の葉は、俺の目の前まで来ると、一つにくっついた。


『手で、触ってみてください』


 葉の裏側同士が一か所でくっついていた。

 なるほど、点と点がくっつくっていうのは分かった。


 材質と材質って?


 俺の手から離れた二枚の葉が、再び目の前に浮く。それが、薄紫色の光に包まれると、掌にふわりと載った。

 調べてみると、葉は完全にくっつき、一枚になっている。


 不思議なのは、両側が葉の表になっていることだ。足元の葉と較べてみると、厚みは一枚とそれほど変わらないようだ。


 うーん、このスキル、どうやって使うんだろう。


 スキルを手に入れたはいいが、その使い道がわからず、戸惑う俺だった。

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