第6話 竜人の足取り - ポンポコ商会5号店オープン -


 パーティーが終わった夜遅く、加藤、ミツ、畑山、レダーマン、舞子、ピエロッティを、瞬間移動でアリスト王城へ送った。疲れていたのだろう。俺は、夢も見ずに、ぐっすり眠った。


 翌朝、点ちゃんの声で、目が覚める。


『(・ω・)ノ ご主人様ー!』


 あ、点ちゃん、朝からとは珍しいね。


『(; ・`д・´) 珍しいね、じゃありませんよ、まったく。何度も、起こしたのに』


 ごめんごめん。ぐっすり寝ちゃった。


『(・ω・)ノ 例の竜人が、ポータルに入っちゃいましたよ』


 えっ! ということは、追跡できなくなるってこと?


『(・A・) そうですよー。もう、本当に、しっかりしてください』


 竜人は、鉱山都市のポータルに消えたそうだ。

 あちゃー。竜人がケーナイの冒険者に化けていたから、本当に獣人世界へ帰るとは思ってなかったんだよね。


 よく考えたら、彼女がいた『霧の森』って、獣人世界へのポータルがある鉱山都市と、こことの中間じゃないか。

 久々に、生まれつきの、うっかりが出たな。

 だいたい、こういうのがあるから、加藤に、『ボー』ってあだ名つけられちゃったんだよね。

 ああ、やっちゃた。


 俺は、仕方なく、関係者に自分の失敗を連絡するのだった。


 ◇


 俺たちの新しい家は、家具などを少しずつ増やし、住みやすくなってきた。


 風通しをよくするために、窓の位置を少しずらしたり、戸口の位置を変えたり、そういう微調整をしている。


 子供たちがよく使う、すべり台の出口には、緑苔を袋に入れた大きなクッションを置いた。

 ナルとメルは、すべるのが、だんだん上手くなって、凄い勢いで飛びだしてくることがあるんだよね。


 ところで、アリストにおけるコケットの販売が、爆発的に増えてきた。

 新しく買ってくれるお客さんに尋ねると、大きく分けて三つのルートがあるようだ。


 一つは貴族からの注文で、マスケドニア国王、アリスト女王(畑山さん)に紹介してもらったというもの。一度に複数の注文が入るのが特徴だ。


 もう一つは、すでにコケットを持っているキツネたちのものを見て、欲しくなったというもの。


 最後に、カラス亭のおばさん、おじさんから紹介されたというもの。

 特に最後のルートは、鼠算式に買いたい人が増えているようだ。情けは人の為ならず、って本当だね。


 番外として、サーシャのシートが欲しいから、コケットを買ってる者もいるようだ。

 一つに二百万円だよ。彼らの心の闇は、深いな。


 そうそう、軍師ショーカの勧めで、マスケドニアにも、『ポンポコ商会』の支店を作ることになった。

 加藤からの頼みで、店はミツさんに任せることにした。しっかり者の彼女なら、きっと売りあげを伸ばすだろう。


 それから、『フェアリスの涙』も、順調に売れている。

 マスケドニア王は、十樽一度に買ってくれた。金額は、俺が聞いて、くらくらした程だ。

 その上、コケット百台注文って……。お金持ちのやることは、よく分からない。


 こうして家と商会のことで忙しくしているうち、ギルドから悪い知らせが届いた。


 獣人世界ケーナイの町にいたポルが、姿を消したというのだ。


 ◇


 ギルドから報告を受けた俺は、すぐにアリストのギルドへ跳んだ。

 いつも開きっぱなしのドアから、中に駆けこむ。


「キャロ、詳しいことを、教えてくれるか?」


 俺は、挨拶抜きで尋ねた。


「お母さんの話によると、尋ねてきたのは、猫人の冒険者で、あなたからの呼びだしだって、告げたそうよ」


 警戒していたはずなんだが、俺に対するポルの信頼がアダになったか。

 俺の中に、言いようのない怒りが膨らんでくる。それを必死に抑えると、キャロにポータルの許可証を頼む。

 キャロは、すでに許可証を作っておいてくれた。さすが、有能なギルマスだ。


 ギルドからルルに念話すると、パーティとして対処するよう勧められた。それを受けて、家族全員の許可証をキャロに頼む。


 俺は、一足先に、ポータルをくぐることにした。

 犯人が宝玉を狙っているなら、すぐにはポルに手を出さないだろう。そう自分を慰めても、不安は消えなかった。


 鉱山都市のポータル前に瞬間移動した俺は、すぐポータルに踏みこんだ。

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