第45話 島でのバカンス


 俺の家族、そして、ミミとポルは、『南の島』のポータルを渡り、学園都市世界アルカデミアに到着した。


 点魔法で作るコケットの引きわたしは、この休暇が終わってからにした。

 今回は、『ポンポコ商会』の慰労も兼ねているから、デロンチョコンビ、パリスとロス、メリンダも連れてきている。 

 話を聞いたエルフ王とモリーネ姫も来たがったが、さすがに保安上の問題から許可が降りなかった。


 学園都市世界で、ポータルがある島は、以前遊んだ島の二つ隣だった。

 遊ぶなら、やはり勝手知った、あの島がいいだろう。泉の位置なんかも、分かってるからね。

 俺たちは、クルーザー型の点ちゃん3号に乗りこみ、海上を島へと向かう。

 みんな甲板に出て、青い海と空を満喫している。ナルとメルが、歓声を上げている。肌に当たる、朝の潮風が心地よい。


 この世界に置いてあった点が蘇ったので、行政府の長メラディス首席と友人のダンにも、連絡を入れておく。


 二三日は、こちらに滞在するつもりだからね。


 ◇


 目的の島は、海の青、ビーチの白、森の緑が相変わらず美しいコントラストを見せていた。


「「うわー!」」


 砂浜に立った、ナルとメルが喜んでいる。

 まあね。この風景は、理屈じゃないよね。

 俺は、簡単な『土の家』を建て、そこにシャワー施設と更衣室を作った。シャワーの水は、水魔術付与で対処する。

 パリスの水着を見たロスが、衝撃を受けている。彼女は、体の線が綺麗で、黒いビキニがよく似合っていた。


「あ、あまり見過ぎないの!」


 パリスにおでこを叩かれ、ロスは赤くなっている。

 デロリンは、本人の希望で、さっそく磯辺に食材を拾いに行った。

 チョイスは、俺と一緒に、森の奥にある泉に水汲みずくみに行く。俺一人でも、なんとかなるんだけど、こういうのは、気分だからね。


 ビーチに戻ると、パリスとロス、ミミとポルの四人は、点ちゃんビーチボールで遊んでいた。


「お兄ちゃん」


 振り向くと、水着を着たコルナが立っている。

 あれ? この水着って、前にも着ていた、紺のワンピースじゃ……。

 あっ! 胸のところに、名前が書いてある。白い布が縫いつけてあり、黒い字が書かれていた。


[こるな ちゃん]


 その字が、なんと平仮名なのだ。見覚えがある字だから、俺にはすぐに犯人が分かった。

 舞子だ。聖女様、一体、何やってるの? 

 しかも、「ちゃん」の文字が小さく書いてあるところに、そこはかとない悪意を感じる。


「どう? 

 必殺の水着は?」


 まあ、確かにある種の人々にとっては、「必殺」だろうね。


「とても、似合ってるよ(?)」


 しょうがないから、そう言っておく。

 コルナは、それで満足したのか、ピーチボールの輪に加わりにいった。


「シロー」


 ルル、ナル、メルも、水着に着替え終わった様だ。

 ナルはエメラルド色のワンピース、メルはルビー色のワンピースだ。それぞれの目の色に合わせたんだね。よく似合ってる。

 ルルは、白いワンピースを着ていた。それは、驚くほど彼女の美しさを引きたてていた。


「ルル……綺麗だよ」


 心の声が漏れてしまう。

 ルルは、恥ずかしそうにうつむくと、俺の手をとり、海に向かって駆けだした。


「「わーい!」」


 娘たちが、その後に続く。


 俺たちは、波打ち際で、水をかけあって遊んだ。


 ◇


 泳ぎを知らない者が多いので、俺が手を取って教える。


 ナルとメルは、すぐに泳げるようになった。

 深いところに行かないように、言ってある。


 なかなか泳ぎが覚えられないのは、意外にもメリンダだった。スポーツなら何でもできそうに見えるけどね。ポルとミミが付きっきりで泳ぎを教えている。


 パリスとロス、チョイスは、かなり沖の方まで出ている。何かの時は点で引っぱりあげるから、大丈夫だろう。


 メリンダがなんとか泳げるようになってきた頃には、お昼時になっていた。

 点ちゃんネットを獲物で一杯にした、デロリンが帰ってきた。

 貝、エビ、カニと、盛りだくさんだ。


 俺は、以前に作った、バーベキュー用の点ちゃんコンロを出した。皆が拾ってきてくれた流木に火魔術を付与し、火をおこす。

 調理セットを、土魔術で作ったテーブルの上に並べる。


 デロリンが、さっそく調理を始めた。


 ◇


 みんなお腹が空いている。

 焼けた食材にデロリンが特製のタレを塗ると、その香りでみんなのお腹が鳴りだした。

 ジュジューッと、焼ける音がする。


「もう、我慢できない!」


 ミミが、叫んでいる。それを聞いて、みんなが笑った。

 各自に皿とフォークを配り、料理を盛りつける。


「では、みなさん、ご一緒に」


「「「頂きまーす!!」」」


 みんな、せきを切ったように、料理へ手を伸ばす。


「うまっ!

 何、これ!」

「はーっ! 

 幸せだー」


 歓声を上げながら食事が進む。

 泉の水とエルファリアのジュース、各自が希望する方を冷やしたコップで出す。


「くぅ~、美味しいです」


 ポルは、泉の水を選んだようだ。ここの水、俺も大好きなんだよね。

 今回は、お茶用に、少し多めに持って帰ろう。


 ◇


 夕日を眺めた後は、花火をする。

 これは、日本の線香花火に近いものを、点ちゃんに頼み、作ってもらった。


『(?ω・)ノ 人間って、不思議なことしますねー』


 点ちゃんに言われたが、まあ、風情ですから。

 夕闇の中でパチパチ燃える、点ちゃん線香花火を、みんなで楽しんだ。


「シロー、ニホンって、こんな素敵なものがあるんですね」


 ルルは、線香花火を気に入ってくれたようだ。


 その日は、みんな自立型のハンモックに寝た。

 この島には、蚊がいないようなので、防虫対策をする必要がない。


 俺たちのバカンス初日は、こうして過ぎていった。

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